経営の健全性・効率性について
平成24年度の料金改定に伴う収入の増加により、経常収支比率が100%を超えて、一定規模の黒字を確保できるようになり、平成28年度に類似団体平均値を上回る水準となった。累積欠損金比率も、平成27年度に累積欠損金を解消し、0%となった。経常収支は改善できたが、料金改定前に発生した資金不足を解消するまでには至っておらず、短期的な支払能力を示す流動比率は100%を大幅に下回った状態が続いている。厳しい資金状況のため、投資事業を最小限に抑えており、その財源として借り入れた企業債(借金)の残高は年々減少している。そのため、企業債残高対事業規模比率は減少を続けているが、過去の借入れの残高がまだ多く残っており、類似団体平均値と比べて高い状況にある。汚水処理原価は、1㎥の汚水を処理するために必要となる費用であるが、平成29年度に過去の投資に伴う減価償却費や企業債利息の一部が終了したことにより大幅に減少している。これにより、経費回収率は100%を上回っており、汚水処理に係る費用を料金収入で賄うことができている。施設利用率が平成29年度に大幅に減少しているのは、算定の対象となる処理水量から流域下水道に係るものを除くように改めたためである。水洗化率が平成29年度に大幅に減少しているのは、人口の算出方法の見直しを行ったためである。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、下水道施設の減価償却がどの程度進んでいるかを表す指標である。まだ低い水準にあるものの、施設の更新をあまり進めていないことから徐々に増加する傾向にある。平成26年度に大幅に上昇しているのは、地方公営企業の会計制度改正の影響によるものである。管渠老朽化率については、管渠施設を集中的に整備したのが平成の時代に入ってからであり、耐用年数の50年を経過した管渠がほとんどないことから、低い水準となっている。そのため、管渠改善率も低くなっている。
全体総括
経常収支では黒字を確保できているが、発生した黒字のほとんどを企業債の償還に使っているため、資金不足の解消はあまり進んでいない。平成29年度末時点でなお約550億円の企業債残高があり、今後も厳しい資金状況が続く見込みである。管渠は比較的新しくまだ更新の必要はあまりないが、過去集中的に整備したものが今後20年から30年のうちに、その更新時期を迎える見込みである。また、処理場、ポンプ場の施設・設備の老朽化も進んでいる。資金不足の解消が優先課題ではあるが、改築更新についても計画的に順次取り組む必要があるため、ストック・マネジメント計画及び経営戦略に基づき、事業費を平準化しつつ費用の縮減を図り、経営基盤の強化を実施していく必要がある。