経営の健全性・効率性について
経常収支比率においては,下水道料金の徴収受託に係る委託料収入の期間見直しにより経常収益が大きくなったため,指標値が例年と比較し高くなったものです。累積欠損金においては,発生しておらず,今後10年間,給水人口及び給水量も増加見込であることから,今後も発生しない見込となっております。流動比率においては,高い支払い能力を示しており,指標値の低減については,会計制度の見直しから,短期償還予定の企業債が流動負債へ組み入れるものとされたことによるものです。企業債残高においては,高利率の企業債を平成23年度までに約25億円,繰上げ償還を実施しております。以降企業債については元金償還額以内に収まる借入としているため,残高は減少し続けており,財務安定性は高い状況を維持しているといえます。料金回収率においては,長期前受金戻入を営業外収益に計上し収益が増額したことで,高くなっています。給水原価においては,減価償却費に占める長期前受金収益化額を経常費用から控除することとされたため,前年度から約16円の減少となりました。このことを考慮しない場合,人件費などの抑制を図ったことにより,経常的な費用はほぼ横ばいの状況であります。施設利用率については,柏市は1年を通し,配水量などに大きな変動を受ける要件が少なく,必要とされる施設能力を明確に出来ることから不要な設備投資をしていないため,施設利用率は高い数値を保っております。有収率においては,全国平均及び同規模団体を上回る数字であるものの,今後施設及び給水装置の老朽化に伴い,漏水等が多発することがないよう,長期的計画に基づき,更新等していくものです。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率においては,現時点では全国平均及び同規模事業体に比べ低い数値となっているものの,今後は更新需要が増大していく見通しとなっております。柏市では全国一律の法定耐用年数ではなく,種別による更新基準年数の設定を行い,財政計画との整合を図っております。施設の重要度を考慮した事業優先順位を設定し,事業計画に基づき更新等実施していきます。管路経年化率においては,「老朽管更新事業」の推進により,現時点では全体の3パーセントにとどまっておりますが,今後,法定耐用年数を越える管路が増大することが予想されます。施設と同様,事業計画に基づき,管路の更新等を実施していきます。管路更新率においては,耐震化率は年々上昇し,平成26年度末では21.1パーセントとなっております。鉛製給水管の布設替えについては,老朽管改良事業に併せて実施し,同年度末で20.9パーセントと,同規模事業体と比べて残存率は高い状況にあるため,事業計画に基づき継続的に取り組む必要があります。
全体総括
平成26年度における会計制度の見直しにより多少の数字の変動は見られるものの,収益により費用を賄えており,財務安定性は高く,同規模事業体と比較した場合においても健全な経営状況にあるといえます。しかし平成37年をピークに,給水人口及び給水量が減少していく見込であること,またその中で老朽化した施設の更新や水道管改良工事等が必要となることから,厳しい財政状況になることが予見されます。このため,アセットマネジメント検討により,柏市独自の更新基準年数を定め,それに基づいた今後60年間の更新需要,財政収支の見通しを立てました。施設の健全性の確保と,事業経営の健全性の確保の両立を図っていくとともに,今後の収支状況等を注視していく必要があります。アセットマネジメントを継続的に実施し,適切な事業規模や施設規模への転換,事業費の更なる削減など,持続的な安定供給に向けた経営努力を続けていくとともに,社会情勢や他事業体の動向等も踏まえた上で,水道料金の検討も視野にいれてまいります。