経営の健全性・効率性について
本市水道事業の経常収支はH23年度の料金値下げにより落ち込んだが、その後、人件費の削減や有収率の向上などの経費節減努力によりやや持ち直している。東大阪市の給水人口は昭和59年度の52万2千人をピークに減少に転じ、節水意識の高まりや景気の冷え込みによる事業水量の減少ともあわせて、ここ数年は配水量は年約1%(年あたり90万㎥の減少)、収益では年約2%(年あたり3億円の減収)の減少傾向にあり、この傾向は今後も続くものと予測している。有収率が、計画的な漏水調査や更新の取り組みなどによって、類似団体より高い値で推移していることや、給水人口密度も高いことから、効率的な水の供給ができているが、高度成長期に計画・整備した施設の規模が現在ではやや過大なものとなっており施設規模の見直しなどにも取り組んでいるところである。また人口一万人あたりの職員数も多いという現状もあって、これらが給水原価を押し上げる一因ともなって、結果、料金回収率も低い値となっている。
老朽化の状況について
本市は昭和7年に市域で給水を開始し、その後、昭和30~40年代(高度成長期)に急ピッチで整備を行った管路の老朽化に更新が追い付かず、年間約1.3kmのペースで老朽管が増えている。管路更新率も0.5%前後で推移しているため、今の投資を続けても、全部の更新に200年かかる計算となる。また、収益の減少傾向が続き財源確保が難しいなか、災害時の水の確保という観点から配水池や配水場(水を一旦貯めて配水する施設)の耐震化・更新を先行しており、相対的に管路への投資額が少なくなっていることや、難度の高い都市域での工事で市民生活への影響が大きいことなどから、管路の耐震化・更新が進んでいない状況にある。
全体総括
企業債残高対給水収益比率が低いことは、過去の起債依存度が高くないことを表すが、今後の必要投資額と年々減少する収入から、料金の改定や起債の充当率を検討する必要もある。ただ、このことは将来も含めた利用者への負担増にもつながる。また、起債を増やすことは自己資本構成比率の低下を招き、経営の安定性の面ではマイナスとなることなどから、慎重に検討していかなければならない。経営の健全性・効率性の点からは、さらなる施設規模や配置の見直し、施設の効率的な運転管理、体制の適正化を進める必要がある。また、老朽化への対応の点からは、今後、配水池等の耐震化の進捗に応じて管路耐震化・更新への投資を増やしていく予定である。将来人口の推計によると40年後には現在の約6割まで人口が減少する可能性があり、今後は施設のダウンサイジングや配置の見直し、アセットマネジメントの取組みをさらに深めるとともに、長期的な視点の「投資・財政計画」「効率化、経営健全化の取組」「経営基盤強化」「防災対策」など企業経営の基本となる「経営戦略」を策定し、安全・安心・安定・強靭で持続可能な水道サービスの提供に向けて取り組むものである。