経営の健全性・効率性について
①②経常収支比率はいずれの年度も100%を超えており、単年度黒字を続けているものの、類似団体平均値(以下、「平均値」)を下回っている。使用者による節水やコスト削減の取組みのほか、地下水を併用する事業者の増加により給水量が低下し給水収益が減少し続けており、累積欠損は発生していないものの、今後の更新投資等に充てる財源の確保を考慮すれば、現在の収益では不十分と考えている。なお、H26から値が増加しているのは、会計制度の見直しにより長期前受金戻入を計上したことによるものである。③流動比率はいずれの年度も200%を超えており、一定の支払能力は確保できている。なお、H26から下落しているのは、会計制度の見直しに伴う企業債の流動負債への計上等によるものである。④企業債残高対給水収益比率は、平均値よりも低い水準を維持している。これは低い料金水準を維持しながら外部資金にも依存しすぎることなく施設整備を進めてきたためである。⑤料金回収率はH26から会計制度の見直しにより長期前受金戻入を計上したことで100%を上回っているが、H25以前と同様に旧会計基準を適用すれば100%未満となる。使用者の全件数のうち96%が給水原価未満(原価割れ)となる料金水準の低さが主な要因と考えている。今後の施設整備費の増大を考慮すれば十分な水準とはいえない。⑥給水原価は平均値よりも10%以上低い値で推移している。地形を活かした自然流下の配水を推進し、また、給水原価が安い自己水を最大限に活用するなどの効率的な水運用のほか、職員削減や業務委託の推進などの経営効率化が一定の効果を上げているものと考えている。⑦施設利用率は平均値よりもかなり高い水準にある。適切な施設規模を確保するなど、効率的に施設を活用できている。⑧有収率はH27で大口径管の漏水が複数回発生したことにより、やや低下したが、依然平均値よりも4ポイント程度高い値で推移している。本市では、昭和51年より漏水防止対策に取り組んでおり、平成26年度末時点の水道統計調査(厚生労働省)では、全国の給水人口20万人以上の99事業体のうち8番目に高い値となっている。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は平均値の推移と同様に微増の傾向にあり、老朽化した施設が年々増加している状況である。長寿命化を図りつつ、調査・点検、評価・診断のもと、本市独自の更新基準を定め効率的な施設更新を進めている。②管路経年化率は平均値よりも著しく高い。本市の水道は歴史が古く、昭和2年の給水開始より、まちの発展とともに急速に拡張してきた。特に1960年から70年代にかけて、高度経済成長期の象徴とされる万博の開催とともに、千里ニュータウンの開発が行われた。その発展の過程の中で建設された大量の水道管が法定耐用年数の40年を超えたことにより、管路経年化率が高くなっているものと考えている。③管路更新率はH25から平均値よりも高い約1%の水準を維持している。
全体総括
経営面について、施設を有効に利用し(⑦)、維持管理に努めることで高い有収率を保っており(⑧)、給水原価は平均値よりも低く抑えることができている(⑥)。しかしながら、単年度の黒字幅が小さく施設整備に回せるほどの資金的な余裕がないこと(①)や、継続的に逆ザヤの状態(水道水の原価よりも売り値が安い状態)にあること(⑤)などから、料金水準の低さが浮き彫りになっている。老朽化の状況について、管路更新率がようやく1%を上回る水準になってきたものの、依然管路経年化率は非常に高い(②)状況にある。本市では、水道管の実際の使用年数を40年~100年(管種等による)と設定しており、当該使用年数内で更新を実現していくためには、今後もこれまで以上の管路更新率が必要と考えている。このような施設更新をさらに加速するためには、多大な資金が必要となることから、本市では、アセットマネジメント(資産管理)により、必要となる施設更新費用の平準化などに取り組み、持続可能な事業推進に努めている。今後増大する更新投資や減少する水需要を踏まえ、適正な料金水準や体系について検討を行った結果、H28年4月から平均10%の水道料金値上げを実施している(2年間かけて段階的に実施)。健全な水道事業を持続していくため総務省から策定が求められている「経営戦略」策定に取り組むなかで、さらなる老朽施設の更新も含めた水道施設の再構築を急ぐため、広域連携による施設のダウンサイジングなどの効率化も図りつつ、料金水準の検証を続け、必要な見直しを図っていく。