収益等の状況について
当施設の営業期間は4月下旬から11月下旬と短く、宿泊者の9割以上が登山者という特色ある施設であるが、観光産業全体がコロナ感染拡大の影響を大きく受けた令和2年度は、当施設においても宿泊者が大幅に減少し例年に増して厳しい営業となった。このような状況下において定員稼働率、収益的収支比率、売上高GOP比率、EBITDA等の各指標も大きく悪化し、類似施設の平均値より低い比率であるものの、一般会計からの繰り入れ比率や宿泊者当りの補助金額ついても大幅な増加となった。
資産等の状況について
当施設は中部山岳国立公園内に位置し、国有林を賃借して営業する国民宿舎であるが、昭和53年に本館を建築、平成6年に別館を増築をした経過から、本館部分については昭和56年改正建築基準法の耐震基準を満たしていない。また、本館建築から43年間、増築から27年間が経過し、施設の老朽化や陳腐化が進んでいることが、大きな課題である。本施設については北アルプスの玄関口として観光誘客を推進している当市にとって必要不可欠な施設であるが、耐震化や大規模改修については、多額の設備投資が必要となることから、施設の果たしている役割、効果、今後のニーズなどを総合的に踏まえ、民間譲渡を含め施設のあり方を検討している。
利用の状況について
当施設については、国民宿舎として多くの旅行者を受け入れてきたが、施設の老朽化や陳腐化、国民の旅行需要の変化により、一般の旅行者や湯治客は減少しているが、北アルプス燕岳の玄関口という立地を生かして、登山客の誘客に力を入れている。また、天然温泉を加温加水無しで提供しているため、宿泊者の満足度も高く、リピーターが多く訪れる宿泊施設である。一方、道路が冬季閉鎖されるため営業期間が限られること、荒天時は多くの登山客が宿泊キャンセルすることから、安定的な経営に苦慮している。令和2年度については、北アルプスの山域において登山自粛を呼びかけた影響により、利用客数は前年の半数以下となり、経営は非常に厳しいものとなった。
全体総括
特定客層に対して高いニーズを有する施設であり、安曇野市観光のキラーコンテンツである山岳観光を推進するにあたり必要不可欠な施設であるが、老朽化も進んでおり、今後も競争力を保ち続けるには、施設の大規模改修が必要と考えられる。また、公営の宿泊施設として運営を続けるのであれば、耐震補強も必要と考えている。ただし、市民利用の少ない当施設について多額の設備投資を行う必要性や意義については十分に検討する必要があることから、施設の果たしている役割、効果、今後のニーズなどを調査した上で、市民説明会を開催し市民の意見聴取を行った。今後はコロナウイルスの感染状況に応じた臨機応変な運営を行いつつ、引き続き、民間譲渡を含め施設のあり方を検討していく。