経営の健全性・効率性について
①経常収支比率は、100%以上を維持しており良好です。H23年度の震災の影響分を除き、各年度とも類似団体平均値(以下「平均値」という。)よりも高い状況です。H27年度は配水施設の修繕費や退職給付費引当金繰入額などの経常費用が増加したため、前年度より減少しました。②累積欠損金は、発生していません(期間を通じ0%)。③流動比率は、100%以上を維持しており良好です。H23年度の震災の影響分を除き、平均値よりも低い状況です。H26年度は新会計制度移行(1年以内の企業債償還金が流動負債とされたこと)によりほぼ半減しましたがH27年度は前払金(流動資産)の増加や未払金(流動負債)の減少などにより、前年度よりも高い数値となりました。④企業債残高対給水収益比率は、継続して企業債残高の縮減に努めていることから、数値は減少を続けていますが、平均値よりもなお高い状況です。H27年度は前年度から20ポイント近い減となり、縮減が進んでいる状況にあります。⑤料金回収率は、100%以上を維持しており、水道料金水準は適切といえます。H23年度の震災の影響分を除きその後は、120%前後を推移していて、平均値よりも高い状況です。⑥給水原価は、中小河川への依存や広域で起伏に富む地勢から、多くの水道施設を抱えているため、平均値よりも高い状況です。H27年度は修繕費や職員給与費の増加等により上昇しました。⑦施設利用率は、配水能力に対する配水実績の割合であり、全体を通して、平均値よりも低い状況です。H23年度は震災による漏水により、その後は原子力災害による避難者の流入に伴う使用量の増や小規模浄水施設の廃止などにより、震災前(56.57%)よりも高い水準です。H26・27年度はそれぞれ前年度を上回る利用率となっていますが、H23年度には及びません。⑧有収率は、平均値よりも低い水準にありH23年度は震災の影響により75%程度まで低下したことから、その後、対策を強化しましたが、H27年度においても震災前の水準(88.9%)には戻っていない状況です。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率は、平均値よりも低く保たれています。年々数値が高くなっていて、施設の老朽化が進んでいることを表しています。資産の多くを占める管路の減価償却が進み、その差は概ね縮小していますが、H27年度は微増(+0.64ポイント)に抑えることができました。②管路経年化率は、管路の老朽化度合で平均値よりも低い状況にありましたが、H25年度以降は同平均値よりも高い状況となり、その差は広がりつつあります。H27年度は前年度の2.07ポイントアップを若干上回り(+2.17ポイント)ました。③管路更新率は、震災の復旧・復興関連事業を優先させたことから、管路更新率は平均値よりも低い状況が続きましたが、H27年度は前年度比約1.5倍の更新量を確保したため、更新率は上昇しました。
全体総括
(経営の健全性・効率性について)「経常収支比率」は、平均値を上回っていて良好ですが、「企業債残高対給水収益比率」は、平均値を超えた負担となっていて、さらに縮減していく必要があります。また、「施設利用率」は、平均値を下回っているため、ダウンサイジング等の対策を進めるとともに、「有収率」についても、漏水防止対策事業と漏水修繕等の対策を強化し改善していく必要があります。(老朽化の状況について)「有形固定資産減価償却率」は、平均値を下回っており良好ですが、「管路経年化率」は、上回っており良好ではありません。震災の復旧・復興関連事業に優先的に取り組んでいることから、復旧・復興関連事業の終了にあわせて、「管路更新率」を高めて、「管路経年化率」を改善していく必要があります。(まとめ)広域で起伏に富む地勢、中小河川への依存など、効率的な運営が難しい中、S41年のいわき市誕生後、S44年に事業創設の認可を受け、施設統合や拡張事業を実施しており、今後、これらの更新需要が増大することが見込まれます。一方、水需要は、給水人口の減少や節水型社会の進行により減少する見込みです。これら相反する動きが強まると見込まれる厳しい事業環境の中でも、水道事業は、後世に健全な姿で引き継いでいかなければなりません。そこで、持続可能な事業運営をするために、アセットマネジメントを活用することとし、H26年度に施設の「再構築」、「更新」及び「耐震化」の長期(40年)計画を策定して、将来の更新需要や投資可能額を見込みました。これらの長期の個別計画を踏まえて、H29年1月に「安全」、「強靭」及び「持続」の方向性から11の目標や38の取組みにより、今後10年間の「新・いわき市水道事業経営プラン」(H29~H38年度)を策定したところです。今後は、最重要事業としてプランに位置づけた「老朽管更新事業」をはじめ、各般の事業に設定した目標指標を達成すべく、関係者の方々と協力しながら取組を効果的に実施するなど、お客様から信頼される水道システムを健全な姿で後世に引き継ぐことを目指します。