経営の健全性・効率性について
①数値としては、100%を超えているが、これは地方公営企業法の一部適用に伴い、臨時的に増えた一般会計繰入金によるものであり、それを差し引くと101.19%となる。単年度収支は赤字ではないが、余力のない状態であるため、今後の更新費用を考慮すると更なる収入の増加、もしくは支出の効率化を図る必要がある。③100%を下回っているが、この数値の根拠となる流動負債には次年度の下水道使用料を財源とする企業債元金償還金が含まれているため、支払能力に問題はない。④当市下水道事業は事業開始から30年を迎え、現在も2025年概成を目標に整備を進めている。当該指標を類似団体と比較すると、半分以下となっており良好と見受けられるが、実質は一般会計繰入金が多くを占めていることが要因。よって、適正な下水道使用料の検討が求められる。⑤当市はまだ延伸整備が中心で、更新費用はほとんど含まれていないが、既に100%を下回っており余力がない状態と言える。普及率は90%超で、今後の下水道使用料増加は見込めないため、費用の削減・効率化を図る必要がある。⑥類似団体と比較しても高い水準にある。これは流域下水道に対する維持管理負担金の処理単価が高く、費用構成の大半を占めていることが要因であり、今後の有収水量減少を踏まえると、広域化等の更なる改善策が必要となる。⑧類似団体と比較すると良好に見えるが、当市の事業開始後年数や普及率から判断すると、若干低い数値にあると思われる。人口減・節水の時代を迎えているため、下水道使用料の確保のためにも、更なる水洗化率向上を図る必要がある。
老朽化の状況について
①当市は流域関連公共下水道のみで処理場等施設の資産を持たず、大半が管渠資産であるため、減価償却がゆるやかで類似団体と比較しても、低い数値となっている。また、老朽化についても事業開始から30年で、管渠の一般的な耐用年数50年に対し半分程度の減価償却であるため、修繕に要する費用はわずかである。しかしながら、2025年度の概成後は更新・長寿命化に焦点を当て、減価償却の状況を踏まえつつ、投資計画等を見直していく必要がある。
全体総括
今回は、地方公営企業法を一部適用し、これまでの現金主義による会計手法から、発生主義に基づく企業会計での決算を基に、各指標の数値を算出している。これにより多少の算出方法の変更はあったものの、基本的な考え方は変わらず、当市においてもこれまでと比較して大きな差異は見受けられなかった。しかしながら、企業会計方式に変えたことによって把握できるようになった資産や負債の状況を踏まえ、今後はこれらの数字を基礎に、人口減少・節水社会を踏まえた、その場しのぎでない料金改定、実態に応じた整備計画、ストックマネジメント計画を策定し、経営戦略に基づく中長期的な計画・対策を検討していく必要がある。