経営の健全性・効率性について
経常収支比率は100%を超え、単年度収支は黒字で推移し、累積欠損金は発生していない。流動比率は、26年度の会計制度の見直しに伴う大幅な低下はあったもの、27年度以降徐々に改善している。企業債については、新規発行額を償還額の範囲内とすることで残高の抑制に努めており、企業債残高対事業規模比率は類似団体よりも低い水準で推移している。経費回収率と汚水処理原価については、平成29年度決算から、決算状況調査における「分流式下水道等に要する経費に係る繰出金」の算定方法が全国的に統一された影響で、前者は急激に低下するとともに、後者は大幅に上昇しているが、平成29年度分も従来の方法で算定した場合、経費回収率は118.13%、汚水処理原価は144.78円となり、いずれも平成28年度以前と同様の水準を保っている。施設利用率については、本市公共下水道事業は汚水と雨水の両方を処理する合流施設を多く有しており、その施設は雨天時を想定した処理能力となっているため、晴天時においては他団体に比べて低い水準になる特徴がある。水洗化率については上昇傾向にあり、引き続き水洗化促進の取り組みを行っていく。
老朽化の状況について
当市の公共下水道事業は事業着手から60年を経過している。有形固定資産減価償却率について、類似団体よりも低い水準となっているが、これは、当市の公共下水道事業が平成22年度から公営企業会計に移行したため、移行するまでの減価償却累計額が反映されていないことによるものである。実際の管渠などの施設については、管渠老朽化率に示されるとおり、類似団体に比べ老朽化が進んでいる状況である。そのため、現在は新規整備よりも改築更新事業を優先して行っている状況である。管渠改善率は類似団体よりも高いが、管渠改善率が1%であれば全ての管渠を更新するのに100年かかることを意味しており、その水準は決して十分とは言い難く、引き続き、改築更新に取り組んでいく必要がある。
全体総括
当市の公共下水道事業は、現時点においては、単年度黒字を計上している。しかし、今後人口減少に伴い使用料収益が減少していくことが見込まれる中、施設の老朽化は進み、事業を継続していくためには改築更新への投資を最優先としなければならない状況である。将来の経営環境は厳しさを増すことが予想され、今後においても事業を継続していくために、経費削減をはじめとしたより一層の経営努力を行っていく必要がある。