経営の健全性・効率性について
昭和60年代に借り入れた高金利企業債、あるいはその繰上償還で借り換えた企業債の償還が終わりつつあり、平成17年度末に359.9億円あった企業債残高は令和3年度末で285.0億円まで減少した。このため、④企業債残高対事業規模比率は全国平均・類似団体平均よりも低く、③流動比率の改善傾向が続いている。また、施設の適切な維持修繕により長寿命化を図り、更新工事を抑制して企業債残高を減らした経過から、標準耐用年数を超過して供用している施設も多く、2①の有形固定資産減価償却率の高さに現れている。減価償却費も平成28年以降ほぼ一定であり、110%台で推移する①経常収支比率・⑤経費回収率、全国平均・類似団体平均より安価な⑥汚水処理原価につながっている。経営の健全化はこの数年で進んだが、分析欄2のとおり、今後は老朽化対策の本格化が必要となる。本市の場合、⑧水洗化率のとおりほぼ全市民に公共下水道が行き渡っており、普及拡大による増収が見込めないことから、各指標の動向に留意して収支のバランスを図らなくてはならない。
老朽化の状況について
本市の公共下水道は、初期の工事着手が昭和27年と早く、かつ、市域が東西に大きく広がるため、雨水・合流・汚水の各管渠の総延長が1,500km以上と非常に長大である。このため、事後保全的な管渠の修繕が中心となっている。②管渠老朽化率は全国平均・類似団体平均を上回っており、今後管渠の老朽化が急速に進むことを鑑みると、決して楽観できる状況ではない。また、本市では平成一桁代に集中的な宅地造成があり、管渠布設を一度に行わなければならなかった。当時発行した企業債の償還を進めるため、適切な維持修繕により施設設備の長寿命化を図り、これまで更新工事を抑制してきた経緯がある。このため、①有形固定資産減価償却率が全国平均・類似団体平均よりも顕著に高い数値となっており、今後の老朽化対策の必要性を示している。
全体総括
ここ数年で経営の健全化が大きく進み、経営指標はいずれも順調に推移しているが、施設設備の老朽化に伴う維持管理費用の増大が懸念される。何より、長寿命化対策でカバーしてきた処理施設の根本的な老朽化対策が今後必要となり、改築・更新費用の増加が見込まれる。このため、経営戦略においては効率的な老朽化対策(建設改良工事の「選択と集中」)と経営の両立を掲げ、計画期間内の資金能力を維持しながら、必要となる施設の改築・更新を着実に行う方向性を示している。今後も、維持管理手法のたゆまぬ改善を図りつつ、経営の基本方針である「サービス提供の持続」「安全・安心の確保」を実現できるよう、一層の努力が必要である。