経営の健全性・効率性について
「①経常収支比率,②累積欠損金比率,⑤経費回収率」①,⑤は100%を超え,②も0%と,事業経営に必要な費用を下水道使用料等の経常的な収益で賄えています。なお,⑤が本年度に大幅に向上しているのは,2015年(平成27年)3月1日から,基準外繰入金の解消や企業債残高の削減を目的として,下水道使用料を改定(平均改定率16.56%)したことによるものです。「③流動比率」前年度と比べて改善したものの,全国平均や類似団体平均と比べて低い水準にあり,将来の施設の更新・耐震化に必要な資金が十分に確保できていない状況です。「④企業債残高対事業規模比率」下水道使用料の改定により大幅に改善していますが,類似団体平均等と比較して非常に高い水準にあります。新たな汚水整備については,引き続き,効率的・効果的な路線選定を行うとともに,事業費を段階的に縮小するなど,新たな借入金の抑制に努めることとしています。「⑦施設利用率」類似団体平均等と比べて高い水準にあり,引き続き,効率的な施設の運営に努めていきます。なお,2013年度(平成25年度)以前の数値は,県が所管する流域下水道の処理場で処理する水量も含めて算定していたことから100%を超えていましたが,2014年度(平成26年度)からは,単独公共下水道のみの処理水量により算定しています。「⑧水洗化率」類似団体平均等を若干下回る水準にあります。水洗化率の向上は,下水道使用料収入の増加につながるものであることから,早期接続に向けた取組を強化しています。
老朽化の状況について
「①有形固定資産減価償却率」類似団体平均等と比べて低い水準にあります。これは2012年度(平成24年度)に地方公営企業法を適用した時点から資産の減価償却を開始したことによります。本市の公共下水道は1952年度(昭和27年度)に事業着手しているため,この数値以上に施設の老朽化は進んでいます。「②管渠老朽化率」類似団体平均等と比べて低い水準であるのは,本市の下水道管渠整備が1980年代後半以降に重点的に取り組んでいることから,現時点で耐用年数(50年)を経過した管渠が少ないことによるものです。「③管渠改善率」現時点で更新対象の管渠が少ないことから低い水準にあります。今後は,管渠の老朽化が進行することから,限られた財源の中で計画的に長寿命化に取り組むこととしています。
全体総括
下水道事業を取り巻く経営環境は,汚水整備により処理区域は拡大するものの,1戸当たりの使用水量が減少傾向にあり,今後の下水道使用料収入の伸びは見込めない状況です。一方で,新たな汚水整備や老朽化した施設の長寿命化・耐震化に対する投資が増大するなど,厳しい状況が続くものと見込んでいます。このような状況の中,経営資源である「ヒト・モノ・カネ・情報」(4つの視点)の全体を最適化するため,将来像や目標を示す,今後10年間の中長期的な経営の基本計画である「上下水道事業中長期ビジョン(経営戦略)」を2017年(平成29年)2月に策定しました。下水道は,市民生活や社会経済活動に欠くことの出来ないライフラインです。これからも,安心・安全かつ快適で衛生的な生活環境を確保するため,将来にわたって持続可能な事業経営を行い,市民に信頼される下水道事業を目指していきます。