経営の健全性・効率性について
使用料収益が伸び悩むなか、平成28年度の汚水処理原価は維持管理費や利息の減少により前年度より微減し、類似団体よりも低い原価を維持できている。経費回収率及び経常収支比率は100%を超え、単年度収支は黒字で推移し、累積欠損金は発生していない状況である。また、流動比率については、平成26年度の公営企業会計制度の見直しにより大きく下がったものの、平成28年度は101.32%となっており、短期的な債務を賄える現金化できる資産を有している。企業債については、新規発行額を償還額の範囲内とすることで残高の抑制に努めてきており、企業債残高対事業規模比率は類似団体よりも低い水準で推移している。当市公共下水道事業は汚水と雨水の両方を処理する合流施設を多く有しており、その施設は雨天時を想定した処理能力となっているため、晴天時における施設利用率は他団体に比べて低い水準になる特徴がある。また、水洗化率については上昇傾向にあり、引き続き水洗化促進の取り組みを行っていく。
老朽化の状況について
当市の公共下水道事業は事業着手から60年を経過している。有形固定資産減価償却率について、類似団体よりも低い水準となっているが、これは、当市の公共下水道事業が平成22年度から公営企業会計に移行したため、移行するまでの減価償却累計額が反映されていないことによるものである。実際の管渠などの施設については、管渠老朽化率に示されるとおり、類似団体に比べ老朽化が進んでいる状況である。そのため、現在は新規整備よりも改築更新事業を優先して行っている状況である。管渠改善率は類似団体よりも高いが、管渠改善率が1%であれば全ての管渠を更新するのに100年かかることを意味しており、その水準は決して十分とは言い難く、引き続き、改築更新に取り組んでいく必要がある。
全体総括
当市の公共下水道事業は、現時点においては、単年度黒字を計上している。しかし、今後人口減少に伴い使用料収益が減少していくことが見込まれる中、施設の老朽化は進み、事業を継続していくためには改築更新への投資を最優先としなければならない状況である。将来の経営環境は厳しさを増すことが予想され、今後においても事業を継続していくために、経費削減をはじめとしたより一層の経営努力を行っていく必要がある。