経営の健全性・効率性について
(経営の健全性)公共下水道事業に地方公営企業法の規定を適用してからの3年間では「①経常収支比率」は100%を超えており,「②累積欠損金比率」も0%と,事業運営に必要な費用を下水道使用料等の経常的な収益で賄えています。「①経常収支比率」や「⑤経費回収率」が2014年度(平成26年度)に向上しているのは,地方公営企業会計制度の見直しに伴い,「⑥汚水処理原価」が減少したこと等によるものであり,経営状況が改善したわけではありません。「③流動比率」は,地方公営企業会計制度の見直しに伴い,翌年度に償還する予定の企業債元金を流動負債に含めることとなったことから,指標が急激に悪化しています。しかし,その償還財源として下水道使用料や一般会計繰入金を適切に見込んでおり,すぐに資金が不足するような状況ではありません。また,「④企業債残高対事業規模比率」が全国平均や類似団体平均と比較して非常に高いことから,新たな汚水整備について効率性・効果性の観点による事業費の段階的な縮小や今後の更新投資を抑制・平準化するなど,新たな借入金の抑制に努めることとしています。(経営の効率性)直近の「⑦施設利用率」は,全国平均や類似団体に比べて高い水準にあり,引き続き効率的な施設の運営に努めていきます。なお,2013年度(平成25年度)以前の数値は,県が所管する流域下水道の処理場で処理する水量も含めて算定していたことから100%を超えていましたが,2014年度(平成26年度)からは,単独公共下水道のみの処理水量により算定しています。また,「⑧水洗化率」の向上は,事業収入の根幹である下水道使用料収入の増加に繋がるものであることから,早期接続に向けてその取組の強化に努めています。
老朽化の状況について
「②管渠老朽化率」が全国平均や類似団体平均に比べて低いのは,本市の下水道管渠整備が1980年代後半以降に集中していることから,現時点で法定耐用年数を経過している管渠が少ないことによるものです。「③管渠改善率」については,現時点では更新対象の管渠が少ないことや,限られた財源の中で計画的に長寿命化に取り組んでいることから,全国平均より低いものの類似団体より高い状況にあります。なお,「①有形固定資産減価償却率」が全国平均や類似団体平均に比べて著しく低いのは,2012年度(平成24年度)から地方公営企業法の規定を適用したことによるものであり,施設の更新が進んでいる訳ではありません。
全体総括
公共下水道の処理区域は拡大するものの,1戸当たりの使用水量が減少傾向にあり,今後も,下水道使用料収入の伸びは見込めない一方で,新たな汚水整備や老朽化した施設の更新・耐震化に多額の事業費が必要となり,事業を取り巻く経営環境はより厳しくなるものと見込んでいます。そうした状況を踏まえ,2015年(平成27年)3月1日から,「独立採算の原則」や「受益者負担の原則」,「雨水公費・汚水私費の原則」に基づき,基準外繰入金の解消や企業債残高の削減を目的として,下水道使用料を改定(平均改定率16.56%)しました。今後は,効率性・効果性の観点から新たな汚水整備に係る事業費の段階的な縮小や,2015年(平成27年)11月に策定した「アセットマネジメント(資産管理)」手法を活用するなど,中長期的な視点に立った計画的・効率的な施設の整備や更新に努めることとしています。下水道事業は,市民にとって重要なインフラであり,安心・安全かつ快適で衛生的な生活環境を提供するため,将来にわたって持続可能な事業経営を行い,市民に信頼される下水道事業を目指していきます。