収益等の状況について
本事業は観光業であり、経営が景気や社会の情勢に左右されやすい一面がある。経常収支比率は100%を上回っており、安定した経営状況を維持しているが、類似団体平均値と比較すると若干下回っている。特に前年度からの減少の要因としては、8月から10月にかけての台風の接近や秋雨前線の停滞による天候不順の影響などで、峡東地域をぶどう狩りなどで訪れる観光客が前年より減少の傾向にあったため、当施設も利用者数が下回ったことが上げられる。経常収支比率が100%に近い数字で推移しているため、平成28年度新たに設置したぶどうの丘仕入材料納入業者選定審査委員会による仕入納入業者の選定や経営戦略で作成した甲州市勝沼ぶどうの丘修繕及び資本的支出計画に沿って計画的に効率の良い設備への更新を図りながら、節電、節水等にも努め、さらなる費用の削減に取り組む。また、平成28年度設置した、ぶどうの丘スイーツ開発検討会議による地域の特産品を使った新メニューの考案や市の関係機関とタイアップした体験型ツアーなどの新商品の開発を進めて来客者、売上の増加を目指して商談会などの営業活動に積極的に取り組んでいく。他会計補助金比率は、他会計からの補助金は市役所からの出向職員の児童手当のみのため、約0.01%と0に近く独立採算を保っている。宿泊者一人当たりの他会計補助金額は、8円と類似施設と比較すると上回っているが、客単価と比べて0.1%程度であり、また、この数字が性質上毎年増加するものではないため、公営企業として独立採算は保たれると考えられる。定員稼働率は、経年比較で横ばいやや上昇傾向にあり、類似施設を上回っており、宿泊需要に合致した良好なサービスの提供が行われていると考えられる。売上高人件費比率は、全国平均よりは下回っているが、類似施設の平均よりは高くなっている。季節により施設の利用率が大きく異なることから、利用率の高い季節に合わせて職員を採用すると、利用率が低い季節に余剰人員となり非効率となることから、利用率が高い季節は、パート・アルバイトの非常勤職員を多く採用することで対応し人員が適正水準になるように調整を行い、また、就労支援としてシルバー人材センターを積極的に活用していく。売上高GOP比率は、現在の当施設の収益性が低く、類似施設の平均や全国平均と比べても低い数値となっている。施設開設から40年以上経過しており、施設の老朽化が著しく施設の修繕費用のウェイトが大きくなっている。更新投資費用の財源としての利益の確保が今後の課題である。EBITDAは、類似施設の平均値を上回っている。経年比較では、ほぼ横ばいの傾向にあるが、前年度と比較すると減少している。
資産等の状況について
有形固定資産減価償却率は、近年、空調等の設備投資を行った関係から類似施設より低くなっており、この数年間でも毎年微減している。施設の資産価値と設備投資見込額の設備投資見込額は今後10年間の建設改良費及び修繕費の調査業務を行い算出した額である。今後は、経営戦略、修繕及び資本的支出計画に沿って計画的に施設の更新を行っていく。累積欠損金比率と企業債残高対料金収入比率はともに累積欠損金及び企業債残高が無いため0%である。
利用の状況について
施設と周辺地域の宿泊者数動向は、近年、地域の特産品である日本ワインがブームとなっており、ワインリゾートやワインツーリズムでの甲州市への宿泊の要望が高まっていると考えられる。当施設は平成13年度に現在の宿泊棟を増築して以来、施設の拡張は行っていないが、延宿泊者数は近年、微増傾向にあり、部屋稼働率も85%を超えている状況である。これらの要望に応えるためには宿泊棟などの拡張が必要と考えるところであるが、施設の投資費用の確保が施設経営の利益だけでは難しい。現状のままで公営企業として持続可能な運営は行っていけると考えられるが、事業のすそ野が広い観光業であるので地域の振興という観点からさらなる利用の増加を見込むためには、施設の更新投資費用の確保という観点からも民間活力の活用方法を検討する必要性を感じる。
全体総括
現状の施設は、フル稼働に近い状況であり、施設の統廃合よりも、現状施設の維持、拡張をしないとサービス水準を維持できない状況である。充実したサービスと安心、安全な施設を維持していくことが非常に重要であり、この点が、ぶどうの丘の抱える一番の課題と考えられる。当施設は、観光、産業、文化等の振興を図り、市勢の発展に寄与するため、及び自然休養村における観光農業を推進するとともに、公衆に健全なレクリエーションの場を提供するために設置され、現在では甲州市のシンボルとして広く認知されている。当施設が地域経済に与える影響として、雇用機会の提供、地域への観光客の誘致、公共交通機関の利用率の向上、全国への甲州市の認知度の向上(PR効果)等、様々な面で大きな役割を担っている。ぶどうとワインを中心とした甲州ブランドに磨きを掛けながら市内外に情報を発信し、本市にとって地域活性化の重要な柱としての役割を永続的に果たしていきたいと考えている。