経営の健全性・効率性について
収益的収支比率が100%を下回り赤字を示しており、現在、地方債の借り入れ等により不足分を補っている状況です。債務残高は各年度の管渠整備の状況や、起債の償還年数の違いにより、年度により増減していますが、全国平均、類似団体の平均と比較すると、低い割合になっています。現在、企業債の新規借入額を抑制し、元利償還金の支払額が新規借入額を上回るように経営を実施していることから、企業債残高対象事業規模比率は、減少傾向で推移すると予測しています。今後も管渠整備や施設更新など設備投資の平準化に努め、企業債残高を把握しながら収支が均衡した経営を行うことが必要です。経費回収率は100%を超えており、類似団体、全国平均を上回っていることから、適正な使用料収入の確保がなされていると考えます。また、汚水処理原価は、類似団体と比較すると低く抑えられており、各年度における汚水資本費の増減により、多少の増減はありますが、ほぼ全国平均に近い数字になっています。今後は使用料収入による健全な経営が実施できるよう、計画的な設備投資を考慮しつつ、処理施設の維持管理費や処理の効率化を推進させ、汚水処理費用を抑制させながら、収入の確保に努める必要があります。また、水洗化率も類似団体、全国平均と比較し低い数字となっています。接続している人口規模に応じた設備投資をしていることから、施設は遊休状態となっておりませんが、施設利用率を向上させるため、水洗化率の向上に努める必要があります。今後、健全経営に向け使用料収入の確保は必須ですので、水洗化率を向上させるため、下水道未接続世帯に対し、接続促進活動を積極的に実施する必要があります。
老朽化の状況について
足利市の下水道は昭和39年に事業着手をしており、年月の経過により管渠の老朽化が進んできている状態です。そのため、管渠改善率は類似団体、全国平均を上回る数字となっています。しかし、有収率が54.02%となっていることから、今後も計画的に改築・更新を実施する必要があります。合わせて、既存施設の有効活用や長寿命化を図り、LCCを低減させるほか、施設の改修・修繕・更新や維持管理に要する経費を平準化させるストックマネジメントを取り入れる必要があります。
全体総括
足利市の公共下水道事業は、昭和52年の供用開始から整備区域の拡大を図ってきました。平成26年度末では、計画面積3,194haのうち2,828ha(88.5%)の整備が終了し、現在、面的な整備から維持管理に軸足を移し下水道経営を行う時代に入っています。そのために使用料収入の確保は最重要課題と考えています。現在は汚水処理に関し、経費回収率や汚水処理原価は、おおむね適正な状態で経営を行っている状況です。しかし、老朽化した管路施設や処理施設の更新費用は増加していく傾向にある半面、人口減少や節水機器の普及などにより、使用料収入の確保が難しくなってきており、下水道事業の経営を圧迫している状況でもあります。今後、下水道事業の安定的な継続を可能にするために、施設の耐震化や長寿命化を進めるとともに改築・更新を計画的に実施し有収率の向上を図るため、水洗化率の向上など使用料収入の確保対策に、より一層力を入れる必要があります。