経営の健全性・効率性について
【収益的収支比率】施設整備に係る地方債償還金返済が収益的支出の大部分を占めており、現在も施設整備中のため引き続き高額で推移していく状況である。収益的収支比率が100%を超えているものの、総収益のうち約74%は一般会計繰入金で占められており、さらなる水洗化率向上を目指し使用料収入の確保に努める必要がある。【企業債残高規模】平均値と比較しても比率が非常に高くなっているが、当市の公共下水道事業特別会計の企業債残高は事業費の縮減にともない減少傾向にあり、さらに2処理区のうち現在整備途中である宇和処理区については営業収益も増加が見込めること等から、徐々にではあるものの比率は改善していく見込みである。しかしながら、企業会計への移行にともない現在の一般会計負担額の基準はさらに厳格化する必要があるため、算定対象となる残高(残高-一般会計負担額)については増加する見込みである。【経費回収率】比率が100%に満たない部分については、全額を一般会計からの繰入金で賄っている状況である。さらなる水洗化率向上を目指し、使用料収入の増収に努めると伴に適正な使用料の分析と改定が今後必要である。【汚水処理原価】平均値と比較して低い状況ではあるが、引き続き接続率の向上を推進し有収水量の増加に努めていく必要がある。【施設利用率】平均値と比較して低い率となっている。これは、現在の処理水量に対して、施設能力が過大となっていることを意味していることから、早期の水洗化率向上を目指す必要がある。また、施設の処理能力や耐用年数等も踏まえ、近隣の農業集落排水施設との統廃合についても検討中であり、適正な施設利用や規模を判断する必要がある。【水洗化率】2処理区のうち1処理区は整備途中であるため、比率は58%程度にとどまっている。処理区毎で見ると野村処理区(H17.3月供用開始)は63.8%、宇和処理区(H19.3月供用開始)は54.5%と、宇和処理区が伸び悩んでいる状況であり、さらなる水洗化率向上の取り組みが必要である。
老朽化の状況について
管渠施設については、野村処理区(平成16年度供用開始)・宇和処理区(平成18年度供用開始)ともに供用から12年~14年の経過であり、現段階では更新実績(老朽化した管渠)がない。しかしながら、処理場施設・マンホールポンプ施設については、平成21年度から修繕経費が毎年発生しており、今後も更新が引き続き必要となる見込みである。そのため、施設の長寿命化を見込んだストックマネジメント計画や令和2年度策定予定の経営戦略などを基に、施設のマネジメントに取り組んでいく必要がある。
全体総括
平成30年7月豪雨では、野村処理区においてマンホールポンプ等の制御盤13ヵ所が浸水被害に遭った他、宇和処理区においては処理水・放流水路壁が50mに渡って倒壊するなど、公共下水道施設でも大きな被害が発生したが、現在はいずれも復旧して通常の機能を取り戻している。当該公共下水道事業は、一般会計繰入金に依存した財政構造となっているが、令和2年度からの企業会計への移行に伴い現在の一般会計繰入金の基準はさらに厳格化することが予想される。そのため、接続推進はもちろん、適正な使用料単価とするための分析・検討と伴に、近隣施設との統廃合による適正な施設利用や規模の検討を進めることにより、経営健全化に向けた取り組みを進めていく必要がある。また、今後の施設等の更新については、ストックマネジメント計画の策定等による施設の長寿命化を図っていく必要がある。