地域において担っている役割
当院は、広島県東北部の地域における精神科医療の拠点施設の一つとして、精神科医療のサービスの提供、メンタルヘルスケアや認知症への対応などに取り組むとともに、県内における精神科医療に対するニーズに応えるため、府中市民病院を初めとした医療機関等に医師や医療スタッフを派遣するなどの役割を果たしている。
経営の健全性・効率性について
①経常収支比率が100%を上回り、例年の水準と同程度となっている一方で、②医業収支比率は年々逓減傾向にあり、他会計負担金などを初めとする医業収益以外の収入への依存度が高まっている結果となった。③累積欠損金比率は、経常収支比率が100%超のため確実に逓減している。また、周辺地域の人口減少や国の政策、新型コロナウイルス感染症の蔓延などによる影響もあり④病床利用率の低下、⑦職員給与費比率の上昇傾向並びに⑤及び⑥の一人あたりの収益の横ばい傾向は、今後の経営において収益を圧迫する要因となるおそれがあることから、収益の増加又は費用の抑制につながる対策が必要である。全体としては、経常収支が黒字であり医業収支比率も高水準にあることから、費用を抑制した効率的かつ健全な運営を行っているとみることができる。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率及び②機械備品減価償却率については、どちらも類似病院平均値を上回っている。加えて、③1床当たり有形固定資産については、類似病院平均値を下回り横ばい傾向にある。このことから、当院の施設及び機械に係る設備投資について、類似団体と比較すると抑制的であることは明らかで、施設の老朽化により新たなニーズに対応しきれていない課題も抱えている。今後予定している病院施設改修に伴い、施設整備を行うことにより病院や診療内容に係る環境の変化や医療ニーズに対応する必要がある。
全体総括
令和3年度においても、経常収支比率は100%超で黒字確保及び増益であった。収益面では、④、⑤及び⑥から改善のための課題は明らかであったが、周辺地域の人口減少や国の政策、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり著しい改善効果は見られなかった。今後においても劇的な改善策は見いだせず厳しい状況を予想している。費用面では、全体の支出の大半を占める⑦職員給与費比率が上昇し、医業収支の赤字幅の拡大に影響した。収益の厳しい状況が予想される中、一層の適正な人員配置を図る必要がある。近年、医業収益の赤字増加を他会計負担金で補填する収益構造が続いており、加えて病院経営に不可欠な人的資源の確保が年々難しくなっていることから、経常収支が黒字とは言え、決して楽観できる状況ではない。さらに病院施設改修に伴う入院患者の受入制限、改修後の病床数の削減などを想定する中、経営対策として外部知見の活用、施設基準の見直しによる収益増や、新たな収益源の検討、実施を行っていくことにより、経営の安定化をめざしていく。