経営の健全性について
①経常収支比率は、前年度より低くなっているものの、100%を上回っており本年度も黒字を維持しています。②営業収支比率も、前年度より低くなっており、料金収入等経営により得られる収益だけでは必要な経費を賄えていない状態が続いています。比率低下の要因は、H27年度末で貸切事業を廃止し、料金収入が約4千2百万円の減となったことが大きいと考えられます。③流動比率は、年々上昇しており、短期債務に対する支払能力としては十分な備えができていますが、長期債務である退職給付引当金を含めるとまだまだ十分とは言えないことから、引き続き資金を留保していく必要があると考えています。④累積欠損金比率は、依然として20%を超えていますが、H27年度以降の単年度純利益計上により、少しずつですが改善しています。全国平均と比較しても低い値ではありますが、累積欠損金解消に向けて引き続き経営改善に努める必要があります。独立採算の状況を示す⑤利用者1回当たり他会計負担額、⑥利用者1回当たり運行経費、⑦他会計負担比率の3つの指標は、いずれも前年度より上昇しています。これは、市補助金が前年度に比べ約5千4百万円増加したこと、人件費の増等により経費が約5千8百万円増加した影響によるものです。平均値を上回る指標もあることから、市との経費の負担区分を明確にし、過度に市補助金等に依存することのない経営に努める必要があります。⑧企業債残高対料金収入比率は、前年度から上昇傾向にありますが、これは、貸切事業の廃止に伴う料金収入の減と乗合車両更新台数の増加によるものです。平均値は下回っていることから、投資の規模は適正な範囲内だと考えています。⑨有形固定資産減価償却率は、大きな変化はありません。平均値とほぼ同水準で推移しており、今後も適切な時期に資産の更新を行なっていきたいと考えています。
経営の効率性について
①~④の各指標は、これまでと同様、平均値と比較して高い水準となっています。民間事業者との比較において、高い水準となるのは路線特性等によるものが大きく、単純な比較はできません。走行キロ当たりの指標である①~③の数値が上昇しているのは、平成27年10月のダイヤ改正時に減便を行い年間走行キロが減少したことによるものです。年間走行キロの減により、走行キロ当たりの収入は増加しましたが、運送原価や人件費も上昇しています。①走行キロ当たりの収入の伸び率に比較して、②走行キロ当たりの運送原価、③走行キロ当たりの人件費の伸び率が高くなっていることから、結果として走行キロ当たりの収益率は低下したことになります。一方、④乗車効率は、前年度より上昇し平均値よりも高い値となっています。これも、前述のダイヤ改正の効果によるものと推定されます。今後も利用者の動向を注視し、より効率的なダイヤ編成を行うことにより、経営の効率化を図っていく必要があると考えています。
全体総括
本年度は、「伊丹市交通事業経営戦略(平成28年3月策定)」の計画初年度であり、経営健全化に向けて乗務員給与の適正化をはじめ、様々な取り組みを行いました。平成27年度末に貸切事業を廃止した影響もあり、経営の健全性を示す各指標は、前年度と比較すると悪化しているものもありますが、経営戦略における財政計画を上回る単年度純利益を計上する等、一定の成果もあがっています。一方で、経営の効率性を示す指標のうち、民間事業者と比較した指標については、依然としてその較差は大きくなっています。路線特性など較差が生じている要因は様々ですが、今後も民間事業者との較差を小さくする努力をしていく必要があると考えています。