経営の健全性について
①経常収支比率は、H26年度からの会計制度見直し以後、退職給付引当金等の負債性引当金の計上が義務化されたことの影響等により若干低くなっていますが、いずれも100%を上回っており単年度の収支としては黒字であることを示しています。一方、②営業収支比率ですが、各年度とも100%を下回っており、赤字となっています。これは、市民の皆様の移動手段の確保等の観点から、元々採算をとることが困難な路線であっても一定数の運行を維持する必要があること等が要因で、それら路線の運行による赤字を黒字路線の利益で補てんしきれていない状況であることを表しています。③流動比率は、短期債務に対する支払い能力を示すもので、100%を超えていることから特に問題はない状況ですが、長期債務である退職給付引当金も含めて判断していく必要があることから、引き続き比率向上を図っていく必要があります。④累積欠損金比率は、H26以降累積欠損金が生じていることから0%を超える状況となっています。これは、前述のH26年度からの会計制度見直しに伴い、過去の退職給付引当金相当額を特別損失に一括計上したためですが、H27は純利益の計上により若干減少しています。⑤利用者1回当たり他会計負担金、⑥利用者1回当たり運行経費、⑦他会計負担比率は、いずれも平均値を下回っており、過度に他会計からの負担に依存している状況ではなく、公営企業としての独立採算性は一定確保されているものと考えています。⑧企業債残高対料金収入比率は、料金収入に対する企業債残高の規模を示すものですが、経年的に見ても平均値との比較において低位で推移しており、引き続き過剰な投資とならないよう留意する必要があります。⑨有形固定資産減価償却率は、平均値をやや上回る水準となっていますが、これは局庁舎の老朽化が影響しているものと推測されます。その他の資産については、他団体と比較して固定資産が著しく老朽化している状況ではないと考えています。
経営の効率性について
①~④の各指標の数値は高い水準にありますが、これらの数値は、路線の特性(運行経路、路線長、走行環境等)に大きく影響されることから、単純に比較することは難しいと考えています。当市バスの路線網は、中心市街地にある鉄道駅を中心として、各方面に放射線状に広がるように形成されおり、各路線の路線長や停留所間の距離が比較的短く、バス同士の離合が困難な狭隘な路線も運行しています。そのため、それぞれの数値は、民間事業者平均と比較して高くなる傾向があります。H27の数値では、①走行キロ当たりの収入706.59円に対し、②走行キロ当たりの運送原価は743.45円となっており、運送原価に見合う収入が得られていない状況にあります。この不足分は、路線補助金等の他会計補助金により補てんされているのが現状です。③走行キロ当たりの人件費は、平均値の2倍超となっています。前述のように単純比較はできませんが、②走行キロ当たりの運送原価に比べ、民間事業者平均値との開きが大きくなっていることからも、当市の人件費が民間事業者に比べて高いことを表しています。④乗車効率は、全国平均を上回っています。これは、当市バスが主に通勤・通学の際の鉄道駅との連絡手段として利用され、利用時間帯が朝夕に集中していることに加え、乗降が起終点となる鉄道駅に集中していることが要因だと思われます。
全体総括
「経営の健全性」を表す各指標は、他団体との比較において特に憂慮すべきものはない状況と言えます。健全性を高めていくためには、営業収支比率を100%以上とすることが理想ですが、市の交通政策上、採算性に関わらず維持していかなくてはならない路線がある中で、それを達成するのは現実的には厳しいと考えています。先ずは、一般会計からの補助金も含めた経営指標である経常収支比率で、100%以上を維持することを目指していきます。「経営の効率性」を表す各指標については、民間事業者との単純比較が難しいことは前述のとおりですが、すべてが路線特性の違いによるものとも言えません。運送原価を少しでも民間事業者に近づけるとともに、利用実態に見合ったダイヤ編成を行うことで、より経営効率を高める努力が必要であると考えています。これら目標の達成や課題解決に向け、平成28年3月に策定した「伊丹市交通事業経営戦略(平成28年度~平成37年度)」に基づく取組を着実に推進していきます。