経営の健全性について
〇事業の状況本市バス事業においては、「仙台市自動車運送事業経営改善計画(平成29~33年度)」に基づく経営改善に取り組んでおり、平成30年度は、4月のダイヤ改正において利用状況に応じた便数調整と運行経路の見直しによる運行効率化を図るとともに、10月に一部券種の運賃改定を実施するなどした。これらの効果により、表①経常収支比率、表②営業収支比率及び表③流動比率の数値は対前年度で改善し、資金不足比率は前年度9.4%から6.5%に改善した。他方、これら指標値は公営企業平均値には届いておらず、また、単年度黒字化には至っていないことから表④のとおり累積欠損金比率は前年度から悪化している。〇独立採算の状況前掲経営改善の取り組みもあり、表⑥のとおり利用者1回当たり運行経費は対前年度で6.2円低減した。他方、本市はDID人口密度が他政令市よりも低く、市街地が比較的低密度であるため、市域を網羅するバス路線網を設定しようとすると多数の系統が必要となり、運行効率が向上しづらい都市環境であることから、公営企業平均値とは隔たりが生じている。一般会計の負担額は年間約30億円であり、これは表⑤⑦のとおり公営企業平均値と比較して非常に高い水準にある。公営企業として補助金への過度な依存は適切でなく、また、受益と負担の公平性の観点からも、今後改善が必要である。〇資産及び負債の状況本市は平成27年度にIC乗車券システムを導入した。表⑨のとおり、有形固定資産減価償却率は、同システムの減価償却が進んでいること等により上昇傾向にある。
経営の効率性について
本市は、これまでバスの需要が減少していく中にあっても、不採算路線も含めて便数等のサービス供給量を極力維持してきたため、表④のとおり乗車効率が低い値となり、表①②のとおり、走行キロ当たりの収入がキロ当たりの運送原価を下回る等、運行効率が低い状態にある。対民間事業者平均値では、表①~③のとおり走行キロ当たりの収入・費用ともに高い状態にあるが、本市バスは、東北ブロック管内の民間事業者と比較して都市部(キロ当たりの収入が多くなる一方、走行に時間を要し運行経費も高くなる)の走行割合が大きいと考えられることから、指標値から単純に効率性を比較することは困難である。平成30年度は、全国的な乗務員のなり手不足や燃料費の高騰といった厳しい事業環境下においても、前掲の通り運行効率の向上等に取り組んだことで表①~④の指標値はすべて対前年度で改善し、表②③のとおり、民間事業者平均値との費用の差は縮小している。
全体総括
需要の減少による慢性的な営業赤字に対して、本市は従来、人件費の抑制やバス運転業務等の管理の委託の活用など、走行キロあたりの運送原価の縮減を図ることで対応し、便数等のサービス供給量は極力維持してきた。しかし、すでに人件費は指定都市の公営バス事業者の中では低い水準とし、管理の委託についても法定上限まで委託を拡大するなど、費用の削減も限界が近づき、従来の事業量を維持したままでは資金不足比率が20%を超過する見通しとなったことから、平成29年3月に「仙台市自動車運送事業経営改善計画(平成29~33年度)」を策定し、利用状況に応じた便数調整(減便)に取り組んでいくこととした。平成30年度は、便数調整や一部券種の運賃改定を実施したことにより、経営指標は全般的に前年度よりも改善した。生産年齢人口の減少等により今後は一層厳しい経営環境が見込まれるが、便数調整や運行経路の見直し等運行を効率化する取り組みを着実に進め、引き続き経営改善に努めていく。