経営の健全性について
新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う国等による行動制限の影響で、引き続き非常に厳しい1年となりましたが、制限解除後は徐々に利用者数は回復し、乗車料収入は前年度を上回りました。①経常収支比率は約10ポイント悪化していますが、これは前年度あった一般会計からの補助金(コロナ禍において運行を継続するための支援金3億円)が皆減となったことによるものです。一方、②営業収支比率は、乗車料収入の増加もあり僅かですが改善しています。両比率とも平均値を下回っており、利用実態に見合ったダイヤによる運行の効率化に努めながら、利用者数の回復に向けた取り組みを進めていく必要があると考えています。③流動比率は、平均値を大きく上回っていますが、約3億円の純損失の計上による資金の減少により、前年度との比較では約78ポイント悪化しています。④累積欠損金比率についても、2年連続で赤字決算となったことから、大きく上昇しています。⑤利用者1回当たりの他会計負担額、及び⑥利用者1回当たりの運行経費ですが、他会計補助金及び運行経費は前年度より減少しているものの、分母となる利用者数が減少していることから比率としては上昇しています。これは、今年度から定期券のIC化に伴い人員算定方法を見直したため、利用者数の算定数値が減少したことが大きく影響しており、前年度と同様の方法で算定した利用者数を用いると当該比率は前年度より低くなります。⑦他会計負担比率は、前述のとおり他会計補助金及び運行経費が減少しているため減少しています。⑧企業債残高対料金収入比率は、乗車料収入が前年度から増となったため若干低下しています。⑨有形固定資産減価償却率は、バス車内混雑情報提供システム等、新たに取得した資産があったこともあり、前年度より僅かに下がっています。保有資産については本来、計画的に更新することが理想ですが、厳しい経営環境において、安全面に配慮しつつ可能な限り長寿命化を図ることも検討する必要があると考えています。
経営の効率性について
本市が運行している路線は狭隘道路が多く、バス停の間隔も短いことから、走行速度が遅く、頻繁に停止・発進を繰り返すため、走行キロ当たりの各指標の数値は、高くなる傾向にあります。①走行キロ当たりの収入は、乗車料収入の回復により前年度より増加しています。②走行キロ当たりの運送原価は、経常経費が減少している影響で前年度から減少しています。③走行キロ当たりの人件費は、走行キロ、人件費とも前年度から大きな変動がなかったため、前年度から大きな変化はありません。④乗車効率は、定期券IC化に伴う乗車人員算定方法の変更により年間乗車人員が減少しているため減少しています。なお、利用者の減少に伴い、昨年度から一部減便した臨時ダイヤでの運行を行っていますが、今年度も同ダイヤによる運行を継続しました。
全体総括
収入の根幹である乗車料収入は、国等による行動制限がない中で徐々には回復しているものの、大幅な回復には至っていない状況です。すでに、リモートワークやオンラインショッピングなど新しい生活様式が定着しつつあり、コロナ前の利用者数には戻らないと想定しています。令和3年12月には、コロナ禍を受け策定を延期していた伊丹市市交通事業経営戦略の後期行動計画である「伊丹市交通事業第4次アクションプラン」を策定しました。利用実態に応じた効率的なダイヤ編成等、運行の効率化による経費節減や、利便性向上による輸送需要の回復・拡大など、当該計画を着実に推進し、引き続き経営改善に努めていきたいと考えています。