経営の健全性について
指標の項目については、公営企業平均値に比べて概ね良好な数値となっている。特に流動比率については200%以上の数値が望ましいとされている中で本市は大きく上回っている。また、累積欠損金や企業債もなく、経営状況は非常に健全であるといえる。しかし、営業収支比率については100%未満であり、公営企業平均値を下回っている。その理由として、営業収入は、少子高齢化にもかかわらず、利用者増加の取組みなどによってほぼ現状を維持できているのに対し、人件費が、人事院勧告による増加や被用者年金制度の一元化による法定福利費の増加及び会計制度改正に係る退職給付引当金の引当義務化などにより増加していることが挙げられ、営業収支比率としては黒字化できていない。
経営の効率性について
走行キロ当たりの運送原価及び人件費が公営企業平均値に比べて高い原因については、本市は主に住宅地と鉄道駅間の輸送であるため、朝夕の通勤・通学時間帯は乗客数が一方向に偏る輸送となることから、輸送効率を向上させるため、一方を回送としている。そのため、実車走行キロが少なくなり走行キロ当たりの運送原価や人件費が高くなっている。また、特に人件費については、大都市の公営交通事業者や大手民間事業者が、路線を他の事業者に委託しているため、人件費に相当する費用が経費として計上されているのに対し、本市においては全路線を直営で運行しているため、人件費をそのまま計上している。そのことも走行キロ当たりの人件費が公営企業平均値と比較して高くなっている要因の一つと考えられる。
全体総括
現状においては累積欠損金はなく、経常収支においても黒字で推移しているため、良好な経営状態である。しかし、少子高齢化による生産年齢人口の減少、平成33年度から車両の大量更新が約10年間続くことによる減価償却費の増加及び同年度から退職者数の増加が予定されているため、その間においては経常収支についても厳しい予測をたてており、流動比率においても悪化することが懸念されている。今後、策定を予定している経営戦略のなかで、バス運行の効率化や総人件費の抑制などの取組みを継続する一方で、車両や保有施設を利用したさらなる広告収入等での増収に取り組み、安定した経営を目指していくものである。