経営の健全性について
京都市自動車運送事業は,平成21年度に「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく「経営健全化団体」となったが,経営健全化計画に掲げた取組を着実に推進した結果,24年度決算において,経営健全化団体から脱却した。さらに,26年度以降は,一般会計からの任意補助金に頼らない「自立した経営」を堅持し,黒字を確保してきた。しかし,令和2年2月以降,新型コロナウイルス感染症の影響により,お客様数が大幅に減少したことから,令和2年度は,平成14年度以来の赤字となった。なお,これまで積み上げてきた未処分利益剰余金等により,累積欠損金は生じていない。○事業の状況について「①経常収支比率」及び「②営業収支比率」については,経費削減に努めたものの,新型コロナウイルス感染症の影響に伴い運賃収入が激減したことにより,①,②ともに減少した。「③流動比率」については,100%を下回ってはいないものの,流動資産の減及び流動負債の増に伴い,比率も低下した。「④累積欠損金比率」については,平成25年度に累積欠損金を解消して以降は発生していない。○独立採算の状況について「⑤利用者1回当たり他会計負担額」については,令和元年度比で他会計補助金等の繰入額はほぼ同水準で推移しているものの,年間輸送人員の大幅な減に伴い,微増となった。「⑥利用者1回当たり運行経費」は,経費の削減に努めたものの年間輸送人員の激減により大幅な増加となった。○資産及び負債の状況について「⑧企業債残高対料金収入比率」については,令和2年度は企業債残高が増加したことにより上昇したが,平成29年度から公営企業平均値を下回る比率で推移している。「⑨有形固定資産減価償却率」については,令和元年度とほぼ同水準で推移している。
経営の効率性について
令和2年度の「①走行キロ当たりの収入」については,大幅な運賃収入の減に伴い,元年度比で急激な悪化となり,事業者平均値よりも下回った。「②走行キロ当たりの運送原価」は,対元年度比で燃料費単価が下がったこと等により減少したものの,民間事業者平均値を上回った状況のままである。「③走行キロ当たりの人件費」については,民間事業者平均値を下回っているが,バス運転士の担い手不足の影響等に伴う委託規模の縮小により増加となった。今後,お客様の御利用状況に応じた路線・ダイヤの見直し等,あらゆる経営健全化策に取り組み,経営の効率性を高めていく。また,「④乗車効率」については令和元年度まで公営企業平均値と比較して高い状態で推移していたが,2年度では平均値を下回ったため,お客様の御利用状況に応じた運行となるよう見直しを行う。
全体総括
令和2年度は,新型コロナウイルスの感染の拡大により,お客様数は大幅に減少し,1日当たりのお客様数は前年度比10万9千人の減少(▲30.7%),運賃収入は前年度比61億円の大幅な減収(▲30.3%)となった。日々の安全運行に直接関わらない事業の見直し等,経費削減に努めたものの,運賃収入の大幅な減を埋めるには遠く及ばず,経常損益は48億円の赤字となった。今後も,テレワーク等の新たな生活様式の定着等,お客様数の回復には時間を要すると見込んでいる。このような厳しい経営状況の中でも,経費削減はもとより,公共交通機関の利用促進等,今できる取組を着実に実施し,将来にわたり「市民の足」としての役割をしっかりと果たせるよう努めていく。