経営の健全性について
①経常収支比率は令和元年度までの過去3ヶ年は黒字を確保しており、公営企業平均値や目標値を上回っていたが、令和3年度は令和2年度に引き続き赤字となり、公営企業平均値を上回ったものの目標値を下回った。また、②営業収支比率も過去5ヶ年赤字で目標値を下回っており、平成29年度以降は公営企業平均値を下回っている。新型コロナウイルス感染症の影響による運輸収益の減少が令和3年度も続いたことから、令和2年度に悪化した①経常収支比率、②営業収支比率、④累積欠損金比率はいずれも令和2年度とほぼ横ばいであった。③流動比率は令和2年度までの過去3ヶ年は目標値を上回っていたが、令和3年度は目標値、公営企業平均値ともに下回った。⑤利用者1回当たり他会計負担額や、⑦他会計負担比率は公営企業平均値を上回っており、特に令和2年度以降増加しているが、これは新型コロナウイルス感染症の影響による運輸収益の減少により収支差が拡大したことから、不採算路線に対する補助である地域巡回路線等維持補助金が増加したものである。⑥利用者1回当たり運行経費は公営企業平均値並みで推移しているが、令和2年度以降は年間輸送人員の減少により増加している。⑧企業債残高対料金収入比率は、令和3年度は減少したものの、令和元年度までと比べると依然として高い水準にある。これは、運輸収益の減少が続いていることによるものである。⑨有形固定資産減価償却率は、過去5ヶ年は80%程度で推移している。
経営の効率性について
①走行キロ当たりの収入は同じ地域内の民間事業者の平均値を上回っているが、新型コロナウイルス感染症の影響による運輸収益の減少が令和3年度も続いたことから、令和元年度と比べると低い水準である。②走行キロ当たりの運送原価も民間事業者平均値を上回っているが、これは③走行キロ当たりの人件費が民間事業者平均値を上回っていることが主な要因となっており、引き続き経営改善を行うこととしている。④乗車効率は公営企業平均値を下回っており、新型コロナウイルス感染症の影響による運輸収益の減少が令和3年度も続いたことから、令和元年度と比べると低い水準である。
全体総括
新型コロナウイルス感染症の影響により乗車人員が大きく減少し、コロナ前の令和元年度と比較して8割程度となっていることから、経常収支が2年連続の赤字となり、非常に厳しい経営状況となっている。こうした中、新型コロナウイルス感染症の影響や、社会経済情勢の変化などに的確に対応しつつ、引き続き名古屋市営交通事業経営計画2023に基づき、「安全最優先のもと、快適さ、便利さを積極的に高めることにより、誰もが安心して利用できる市バス」を目指すため、計画に掲げた事業については重点的に取り組んでいく。また、経費の縮減などに取り組むとともに、企業の経済性を発揮しながら、効果的な乗客誘致施策など収入の確保にも取り組むことで、収支の改善に努めていく。