経営の健全性について
本市では、「川崎市バス事業経営戦略プログラム」(令和元年度~令和7年度)に基づき、安全な輸送サービスの確保、快適で利用しやすいサービスの提供、経営基盤の強化などの取組を進めている。令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言の発出等による外出自粛や、テレワークの普及等による行動様式の変容などにより、前年度に引き続き乗車人員が感染拡大前の水準まで回復しない厳しい状況の中、市バス輸送サービスの持続的提供に向け、利用動向を踏まえたダイヤ改正や業務見直しなど、経営改善に取り組んだが、乗車料収入の減少は大きく、収益的収支は赤字決算となり、累積欠損金が増加した。事業の状況①経常収支比率及び②営業収支比率は、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前年度に比べ、乗車料収入の増加や経営改善の取組による経費の減少により増加した。③流動比率は、現金預金の期末残高ほか流動資産が増加したこと等により対前年度で増加した。④累積欠損金比率は、純損失の計上により対前年度で増加した。独立採算の状況公営バスとして公共施設等への接続や民間事業者では対応の難しい地域の交通手段を確保するための路線を運行していることから、一般会計からの適正な公共負担を受けている。このため⑦他会計負担比率は公営企業平均近似値またはそれを上回る値で推移している。資産及び負債の状況バス車両使用年数の延長等により投資を抑制してきたが、営業所の建替え整備やバス車両の計画的な更新、公営企業特別減収対策企業債の起債に伴い、⑧企業債残高対料金収入比率は対前年度で増加、⑨有形固定資産減価償却率は対前年度で減少した。
経営の効率性について
①走行キロ当たりの収入及び②走行キロ当たりの運送原価はともに対前年度で増加したが、両者の差は前年度の221.98円から126.4円に減少した。また、バス1台の乗車定員に対する平均輸送人員の割合である④乗車効率は、前年度より増加した。これらは、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた前年度に比べ乗車人員及び乗車料収入が増加したことに加えて、利用動向を踏まえたダイヤ改正を実施し、運行を効率化したことによるものである。③走行キロ当たりの人件費は、職員数の減等により減少した。これらの指標の民間事業者との比較について、対象となる民間事業者の規模、営業地域、経営手法等(管理委託による運行など)が一様でなく、単純比較はできないものの、①走行キロ当たりの収入は民間事業者平均値よりも低くなっているが、これは前述の公共施設等への接続や民間事業者では対応の難しい地域の交通手段を確保するための路線を運行していることが一因と考えられ、また、②走行キロ当たりの運送原価は民間事業者平均値よりも高くなっている。
全体総括
乗車料収入の増加や経営改善の取組の着実な推進により、経常収支は前年度から改善したものの、コロナ禍における社会変容の影響などにより、厳しい経営状況が続いている。今後はさらに、特別減収対策企業債の償還やバス車両更新台数の増加、営業所の建替え整備などにより、一層厳しい状況が見込まれることから、令和4年3月に策定した「川崎市バス事業経営戦略プログラム(後期計画)」(令和4年度~令和7年度)に基づき、利用動向等を踏まえた事業規模の適正化などに取り組み、持続可能な経営基盤を構築することで、市民やお客様の大切な交通手段を確保していく。