経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、100%を超え、料金回収率も改善されているものの、料金収入以外(一般会計繰入金)の収入で賄われていることが分かる。この原因は企業債残高対給水収益比率で示されているように事業規模に対して、起債額が大きいことが主な原因である。さらに、この原因は平成6年に大久保浄水場の水源が渇水し、給水区域の時間断水を行ったことにより、早急な対策が必要になったためである。新たな水源の確保と浄水・配水施設が必要になり、その建設に起債事業を当てたことから、起債額が全体の85%を占めるようになったことが、大きな原因である。維持管理経費は人件費を抑えているものの老朽化による修繕費の増加により大きな削減には至っていない。収入については、人口の減少や節水機器などの導入、またその意識により、大きな増加は望めないものの、下水道の加入促進を図りながら、減少額の圧縮に努めている。施設の利用率については、需要期、特に帰省で多くなるお盆時期の稼働率が高くなることから、現在は適切な施設規模であると判断している。しかしながら、一時的に回復している有収率も漏水による配水量の増で大きく変動することから、早急に老朽管の更新による安定した水道水の供給を図る必要がある。現在の経営状況では、経常収支は黒字を示しているが、毎年損益勘定留保資金の大半を資本的収支の補てんに使用しており、施設の更新に充てる財源が確保されていない。
老朽化の状況について
現在、管路については、法定耐用年数を迎えることから、本格的に更新事業に取り掛かる必要がある。しかしながら、財源の確保や効率的な整備を考慮し、計画的に進めなければならないことから、道路事業計画等に合わせ、支障となる箇所を優先に選定しながら、進めなければならない。なお、施設の更新については将来予測や省エネ施設等、最新情報を取り入れながら、資産管理と合わせ、再構築を検討していく必要がある。今後は、老朽化対策のリスク評価、優先順位、投資可能額の設定などを調査し、該当施設を選定し、計画的かつ集中的に行っていく検討が必要である。
全体総括
経営的には上記のように収入の減少傾向や支出の増加傾向となり、そのバランスを大きく変えることは難しいと考えられるので、水道料金の見直しが必要となってくるものの、県内の上水道事業体の中でも高料金であることを踏まえ、近々の料金の見直しは困難であると考えられる。したがって、経営戦略による中長期的な事業運営を立てることにより、将来予測を検討しながら、料金改定の導入時期を見据える必要がある。今後、事業(サービス)継続を目的に、老朽化対策、ダウンサイジング、投資可能額と対策優先順位などを検討するため、上水道アセットマネジメント計画や水道ビジョンを策定し、計画的かつ効率的に事業を推進していく。