経営の健全性について
〇事業の状況本市バス事業においては、令和3年3月に策定した「仙台市交通事業経営計画(令和3~12年度)」に基づき、利用状況に応じた運行効率化やバス運転業務の管理の委託等の経営改善に取り組んでいる。令和3年度は、新型コロナウイルス感染症の影響からの、乗車人員の回復により表①経常収支比率及び表②営業収支比率が対前年度で回復した。単年度損益について引き続き赤字となったことから、累積欠損金は対前年度で増加となり、表④累積欠損金比率も悪化した。資金繰りの悪化に対して、特別減収対策企業債5億円を起債することで、資金不足比率を5.6%にとどめ、経営健全化団体への転落を回避した。しかしながら、表③のとおり流動比率は57.0%と低位にあり、資金繰り安定のための対策が必要である。〇独立採算の状況表⑥のとおり利用者1回当たり運行経費は対前年度で27.9円減少したが、これは前掲の乗車人員の回復と便数調整による運行効率化によるものと考えられる。一般会計の負担額は令和3年度で約33億円であり、国の臨時交付金を財源とする公共交通運行継続奨励金等の増加により、前年度比で増加している。表⑤⑦のとおり公営企業平均値と比較して非常に高い水準にある。公営企業として補助金への過度な依存は適切でないことから、営業収支の改善を図り、負担額の抑制に取り組んでいく。〇資産及び負債の状況表⑨のとおり、有形固定資産減価償却率は令和元年度の固定資産台帳修正に伴う減価償却累計額の減少等により一旦大きく低下したが、IC乗車券システムの減価償却等により年々上昇している。
経営の効率性について
本市は、需要が減少していく中でも、不採算路線も含め便数等のサービス供給量を極力維持していたこともあり、表④のとおり乗車効率が低い値となり、表①②のとおり、走行キロ当たりの収入がキロ当たりの運送原価を下回る等、運行効率が低い状態にある。対民間事業者平均値では、表①~③のとおり走行キロ当たりの収入・費用ともに高い状態にあるが、本市バスは、東北ブロック管内の民間事業者と比較して都市部(キロ当たりの収入が多くなる一方、走行に時間を要し運行経費も高くなる)の走行割合が大きいと考えられることから、指標値から単純に効率性を比較することは困難である。令和3年度においては、路線廃止や需要動向に応じた減便を行った結果、年間走行キロが減少したものの、燃料費の高騰等により表②の運送原価は上昇した。一方で民間事業者平均値も上昇したことから、差は縮小している。また、表③の人件費は減少し、民間事業者平均値の差も縮小した。
全体総括
需要の減少による慢性的な営業赤字に対し、本市は従来、人件費の抑制やバス運転業務等の管理の委託など、走行キロあたりの運送原価の縮減を図ることで対応し、便数等のサービス供給量は極力維持してきた。しかし、すでに人件費は指定都市の公営バス事業者の中では低い水準とし、管理の委託についても法定上限まで委託を拡大するなど、費用の削減も限界が近づき、従来の事業量を維持したままでは資金不足比率が20%を超過する見通しとなったことから、前掲の令和3年3月に策定した経営計画では、利用状況に応じた運行効率化(一定エリアの路線廃止や減便)や運賃改定に取り組むこととしている。新型コロナウイルス感染症や生産年齢人口の減少等により今後も厳しい経営環境が見込まれるが、経営計画に掲げる取り組みを着実に進め、引き続き経営改善に努めていく。