地域において担っている役割
当院は本県における精神科医療の基幹的病院として精神科救急、急性期治療、重度慢性患者への対応に取り組んでいます。全県下の精神科救急医療機関のセンター的機能を有するとともに、精神科救急情報センターとして24時間体制で診療に応じています。また、児童・思春期病棟を有し、分校を併設することにより、医療と教育が連携した入院児童・生徒への支援に取り組むとともに、児童思春期専門外来の充実を図っています。このほかDPAT先遣隊の設置をはじめとした災害医療や、司法精神医療、地域医療支援などにも取り組んでいます。
経営の健全性・効率性について
平成30年度においては、経常収支比率が前年度から改善してほぼ100%となり、概ね収支均衡となりました。医業収支比率、職員給与費対医業収益比率についても、数値が改善していますが、これは、平成29年10月に医療観察法ユニットが開棟してから、通年での運営となり、事業が軌道に乗ってきたことによるものです。累積欠損比率は、類似病院平均値より高く、自己資本に乏しい面があるものの、当面の資金繰りへの懸念はありません。患者1人あたり収益についても、類似病院平均値より低いものの、医療観察法ユニットの開棟などにより、入院・外来収益ともに単価は上昇傾向にあり、今後とも収益の確保に努めていきます。
老朽化の状況について
平成20年2月に現病院に新築移転し、10年が経過したところですが、比較的建物が新しいことから、有形固定資産減価償却率は類似病院平均値より低く、全体的な老朽化の進行度合いは比較的高くないと言えます。一方で、今後建物や建物付属設備の大規模修繕を実施する予定であることや、器械備品減価償却率が類似病院平均値より高いことにも見られるように、器械設備の老朽化が進んでいることなどから、修繕費や器械備品の更新費等が必要となる見通しであり、経営上の大きな課題です。今後は、収益の改善に取り組む一方で、必要な修繕、設備投資を行い、安定的な経営を確保してまいります。
全体総括
「入院医療中心から地域生活中心へ」という国の政策の流れの中で、精神医療を取り巻く環境は大きく変化しています。また、県内の精神科医療の入院患者は、人口減少に伴い減少傾向であり、当院の運営にとっては厳しい状況となることも予想されます。このような中で、県の精神医療の基幹的病院として、精神科救急、急性期治療、重度慢性患者への対応、児童・思春期医療、患者の地域移行支援などに引き続き取り組み、また県立病院としての使命を果たしていくため、政策医療として司法分野での医療観察法病棟の運営や地域医療支援、災害精神医療の充実、地域で活躍する医療従事者の育成などにも役割を果たします。当院が質の高い医療を提供し続けるためには、安定した経営基盤が必要不可欠であり、新公立病院改革プランに基づき、収益確保対策等、経営改善に取り組んでいきます。