地域において担っている役割
24時間体制の精神科救急医療、アルコール・薬物依存症、児童精神科など、多職種チームによる高度な専門医療を提供し、他の医療機関では治療困難な精神疾患を持つ患者を全県から受入れている。認知症医療については、地域の関係機関と連携し、近隣市町村で進める認知症ケアパスに参加している。また、県内の精神科医療水準の向上に寄与するため、精神科研修・研究センターを設置し、人材育成や調査・研究に力を入れている。
経営の健全性・効率性について
入院・外来患者の減少により収益が減少、また給与費が給与改定の影響等によって前年を上回り支出が増加したことにより、経常収支比率・医業収支比率ともに前年度より悪化している。病床利用率、入院患者1人1日当たり収益が類似病院平均を上回り、職員給与費対医業収益比率及び材料費対医業収益比率が平均を下回っているにも関わらず医業収益比率が低くなっている。原因としては当院の設備投資(減価償却費)の比率が高いことによる。特に平成30年度は医療情報システム(電子カルテ)更新に伴い減価償却費が大幅に増額した。なお、外来患者1人1日当たりの収益が27年度から低くなっているのは、院外処方化によるものである。
老朽化の状況について
有形固定資産は病院建築後の年数が浅いため、当面は施設維持に多額の費用がかかる見通しはない。しかし、徐々に建物設備の修繕が増えていることから、今後施設の適切な管理を行い長寿命化を図るとともに、将来の大規模修繕・増改築に備える必要がある。器械備品については、平成30年度に医療情報システム(電子カルテ)更新を行ったため、大幅に減価償却率が下がっているが、その他の器械備品については平成29年度までの償却率の上がり方の傾向から、今後入替えやメンテナンス等の費用が増加することが予想される。
全体総括
病床利用率は長期的に上昇し、入院患者の占める割合が高まっており、施設の効率性を高めているところである。病床利用率をさらに上昇させるため、利用率の変動が大きい病棟の安定化を図る方策を検討している。今後は、国が目指す精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの一翼を担うため、訪問看護ステーションの設置やデイケアの充実を図る計画がある。さらに、児童から成人まで切れ目のない医療を提供するとともに児童思春期精神科を専門ととする医療従事者を育成し、県全体の医療水準向上を図るため、児童思春期精神科の拡大を図る構想がある。これらは増改築や職員数の増加を伴うことから、目指す姿と採算のバランスを考えて計画を進めたい。