地域において担っている役割
当院は、24時間体制の精神科救急医療、アルコール・薬物依存症、児童精神科など、多職種チームによる高度な専門医療を提供し、他の医療機関では治療困難な精神疾患を持つ患者を全県から受入れている。認知症医療については、地域の関係機関と連携し、近隣市町村で進める認知症ケアパスに参加している。また、県内の精神科医療水準の向上に寄与するため、精神科研修・研究センターを設置し、人材育成や調査・研究に力を入れている。
経営の健全性・効率性について
前年度より、入院患者数及び入院診療単価が上昇、外来患者数は微減したものの、外来診療単価が上昇したことから、経常収支比率、医業収益比率ともに改善している。これは、当院の損益分岐点を病床稼働率80%、外来患者180人と見込み、これを目標に取組んだ成果と考える。入院診療単価は、再入院の減少及びベッドコントロールにより上昇させる余地があるため、今後はこれらに力を入れることでより収益性を高める。収益は65,000千円以上増加したが、費用は4,000千円増にとどまった。患者の増加に伴う材料費等の伸びを減価償却費の減少で賄えたことによるものである。なお、外来患者1人1日当たりの収益が27年度から低くなっているのは、院外処方化によるものである。
老朽化の状況について
有形固定資産は建築後年数が浅いため、当面は施設維持に多額の費用がかかる見通しはない。適切な管理を行い、施設の長寿化を図るとともに、将来の大規模修繕・増改築に備える必要がある。機械備品については、減価償却率が高くなっており、今後は機械備品の入替えやメンテナンス等にかかる費用が増えることが予想される。
全体総括
病床利用率は長期的に上昇し、入院患者の占める割合が高まっていることから、収益性は年々高まっている。病床利用率をさらに上昇させるため、利用率の変動が大きい病棟の安定化を図る方策を検討しているところである。今後は、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの一翼を担うため、訪問看護ステーションの設置やデイケアの充実を図る計画がある。さらに、児童から成人まで切れ目のない医療を提供するとともに児童思春期精神科を専門とする医療従事者を育成し、県全体の医療水準向上を図るため、児童思春期精神科の拡大を図る構想がある。これらは、増改築や職員数の増加を伴うことから、県及び関係機関との連携を図りながら、目指す姿と採算のバランスを考えて計画を進めたい。