経営の健全性・効率性について
東日本大震災で発生した津波により集落の流出、浸水など甚大な被害を受け、集落の集団移転に伴う移転跡地の整備を早期に行い、漁村地域の漁業再生と復興を図ることを目的とした特別な事情によって処理施設を再建したため、全ての項目において良好とはいえない数値となっている。経費回収率については、震災により維持管理費が増加しているものの、利用者のほとんどが被災者のため、状況を鑑み使用料の改定増を先送りしているためである。水洗化率及び施設利用率については、震災により大幅に減少したが、施設の再建によって年々増加しているのが現状である。企業債残高対事業規模比率については、復興事業の繰越により一時的に増加したものの、事業終了により今後、企業債の発行予定がほとんどないことから、減少していくものと考えられる。汚水処理原価については、地理的な要因により類似団体と比較し建設コストの増が考えられる。地形的に個人設置の浄化槽も難しい地区のため、今後も同様の数値で推移すると考えられる。今後は、積極的な地方公営企業法の適用等により経理内容を明確化するとともに、使用料水準をより適正化し、経営の安定化に努めると同時に、使用料は徹底した効率化・合理化がなされていることを前提に設定されるものであることから、建設費・維持管理費のより一層の削減に努める必要があると考えられる。
老朽化の状況について
供用開始からまだ10数年ということ、及び震災による施設の再建直後のため、老朽化はほとんど見られないのが現状である。今後は、漁業集落排水処理計画と費用対効果を検証しながら、老朽化に対応していく予定である。
全体総括
今後、施設の老朽化等に対応するためには、経営基盤の強化や有収水量の確保、維持管理の効率化及び使用料の適正化は必須であり、これらを的確に取り組むためには、公営企業が自らの損益・資産等を正確に把握することが必要であり、公営企業会計の導入が求められる。公営企業会計の導入に当たっては、平成27年度から平成31年度までの5年間で取り組むことが総務省から要請されているため、現在平成32年度の法適化を目途に、その作業を進めている。なお、平成28年度において一部の業務を平成32年度までの債務負担行為により、委託契約を締結済みである。