経営の健全性・効率性について
経常収支比率は100%以上、累積欠損金がなく累積欠損金比率は0%となっており、類似団体と比較しても健全な経営と言える。給水原価は、一事業所との契約で投資効率がよいことから類似団体と比較しても低い水準にある。また、料金回収率においても、100%以上かつ類似団体平均値を超えており、給水に係る費用を給水収益で賄えている。流動比率は、短期的な債務に対する支払能力を確保できていることを示し、流動性を確保するためには200%以上が望ましいとされているが、すべての年度で1,000%以上となっており類似団体の平均値よりも大きく上回っている。また、平成17年度からは企業債借入残高がない。契約率は、平成17年度の契約事業所からの減量要望(責任水量15,000m3)により施設能力20,000m3に対して現在の75%で平成19年度から推移している。有収率は責任水量制により100%となっているが、施設利用率については、臨時増量の要望に応えることとしているため変動している。
老朽化の状況について
管路経年化率については、管内のクリーニング工事を定期的に実施することで安定給水できているものの、類似団体を大きく上回っている。また、管路更新率は、未実施の状態が続いている。有形固定資産減価償却率は、償却資産における減価償却済の部分の割合を示す比率で、減価償却の進み具合や資産の経過年数を示す。数値自体は年々増加しており、平成30年度からは取水地点の追加による改良工事によって改善しているものの、施設の老朽化は進んでいることが分かる。
全体総括
当市の工業用水道事業は、これまでの行財政改革等の効果により、現状においては類似団体と比較して健全な経営であると言える。昭和39年に工事着手し、取水井5井の築造及び配水管4,103mの埋設、運転管理室の建設により供給を開始し、その後は、電気室と電気設備等の全面改良、非常用発電設備の改良や管内のクリーニング工事を定期的に実施することで安定給水できている。近年、渇水期に水位が低下して現状の水源能力の維持が難しくなっていることから、令和2年度末には取水地点の追加工事を完了させる。老朽化対策の強化が一層求められるため、需要予測及び収支見通しに留意しつつ、今後も適正な投資水準により老朽化した施設の計画的な改築・更新を行っていくことが必要である。