経営の健全性・効率性について
ユーザー企業による契約水量の増量により、経常収支比率が100%を上回り、近年続いていた単年度収支の赤字が解消された。また、累積欠損金は発生しておらず、料金回収率も100%を上回った。給水原価についても、類似団体平均値と比較して高い水準で推移していたが、令和3年度決算では類似団体平均値よりも低い水準となり、若干ではあるが好転している。流動比率は、2年連続で下降しているものの、類似団体平均値と比較して高い水準で推移しており、100%を上回っていることから、短期的な債務に関する支払い能力は確保されている。施設利用率・契約率についても、契約水量の増量に伴い、前年度と比較して大きく上昇している。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は、類似団体平均値と比較して高い水準で推移しており、施設全体の老朽化が進んでいることを示している。管路経年化率については、法定耐用年数を超過している管路が75%を上回っている。この理由については、事業創設当初である昭和44年、45年に布設した管路の多くが未更新となっているためである。管路更新率については、配水管路の2条化事業により、既設管を撤去せずに新設を行っているため、平成30年度以降0.00%となっている。
全体総括
本市工業用水道事業は、近年、単年度収支の赤字が続き、厳しい財政状況にあったが、契約水量の増量により契約率が大幅に向上し、単年度収支が黒字に転じた。一方、事業創設当初に布設した管路等、施設の老朽化が進む中で、今後、工業用水の安定供給を継続していくためには、管路の更新、耐震化等の事業費の増加は避けられない状況である。これらの状況を踏まえ、本市では、令和3年3月に策定した「下関市工業用水道事業経営戦略」に基づき、経営基盤の安定化、老朽化施設の更新・耐震化、新規ユーザー開拓による未売水の解消及び財源確保のための料金見直しの検討等、本事業が抱える諸課題に着実に対応し、良質で低廉な工業用水を将来にわたって安定的に供給するという使命を果たしていく必要がある。