経営の健全性・効率性について
累積欠損金は発生していないが、経常収支比率は平成27年度以降、料金回収率については平成26年度以降、100%を下回っている。また、給水原価についても、平成27年度以降、類似団体よりも高い水準であり、厳しい財政状況が続いている。この理由については、一部の企業の契約水量の減量により、有収水量が減少し、給水収益が減収となったためである。流動比率は、100%を超えており、類似団体と比較して大きく上回っていることから、短期的な債務に関する支払い能力は十分に確保されている。施設利用率・契約率については、類似団体と比較して高い水準であるが、本市の事業形態が、山口県企業局から責任水量制により工業用水を受水し、ユーザー企業に供給するものであり、未売水が財政状況に及ぼす影響が大きいため、より契約率を高めることが、財政状況を改善するため、急務となっている。
老朽化の状況について
施設全体の減価償却の状況を表す有形固定資産減価償却率は、類似団体と比較して高く、施設全体の老朽化が進んでいることを示している。また、管路経年化率については、類似団体と比較して大幅に高く、法定耐用年数を超過している管路が80%を超えている。その背景としては、事業創設当時である昭和44年、45年に布設した管路の多くが未更新となっているためである。管路更新率については、平成29年度が特に高い数値となっている。これについては、各年度において布設した管路延長数に大きな差は無いが、当該年度以外は、配水管路の2条化事業により、既設管を撤去せずに新設を行ったため、管路更新率に反映されていないことが要因である。
全体総括
本市工業用水道事業は、平成4年10月以降、消費税の転嫁を除いては、料金改定を行うことなく事業を継続してきたが、近年では、単年度収支の赤字が続いており、厳しい財政状況にある。また、令和3年1月から新規ユーザーの給水申し込みを受けてはいるが、産業構造の変化等により、水利用の合理化が図られる等、工業用水の需要は近年減少傾向が続いている。一方、施設の老朽化は進んでおり、管路の更新、耐震化対策等により、整備費用が増加することは避けられない状況である。これらの事業を実施するため、アセットマネジメント手法の活用や施設の長寿命化などを図ることで事業費の抑制を行い、可能な範囲でユーザーの負担を軽減するように努めなければならない。また、必要に応じて財源確保のため、料金の見直しを検討する必要もある。