収益等の状況について
過去5年間において収益的収支比率は100%を超えて推移しているが、いずれにおいても他会計補助金(一般会計繰入金)が発生している。特に平成27年度は施設修繕費への充当、令和元年度は営業不振から年度途中で撤退することになった指定管理者(第三セクター)への経営支援によるものであり、総じて事業として独立採算が行えていない状況にある。売上高GOP比率、EBITDAにおいては平成27年度、令和元年度以外は一定程度の健全性を確保できているが、事業継続を考えると収益率向上が急務である。なお、指定管理者の撤退は令和2年1月末であり、その後は町直営で施設維持を行い、休養宿泊事業は中断した。売上高人件費比率において令和元年度のみ数値が計上されているのは、町直営期間における施設管理員の配置のためである。
資産等の状況について
昭和63年の建設から約30年が経過しているため、施設の資産価値は漸減している。住民生活の福祉の向上と健康増進に寄与するとともに、誰もが低廉で快適に利用できる休養宿泊施設の設置・運営を行うという本事業の目的を考慮すると、本町の観光振興をはじめとする各種施策を踏まえながら老朽化対策やリニューアルの必要性が認められる。現時点で多額の設備投資は見込んでいないものの、観光需要を予測した施設の充実を図る必要がある。しかし、企業債残高対料金収入比率は減少傾向とはいいながら高位で推移していることから、真に必要な改修を見極め、最小の投資で一定の効果を生み出す努力が必要となる。
利用の状況について
過去5年間における本町の宿泊数動向は減少傾向にあり、本事業においても同様である。これは本地域全体において宿泊需要が厳しい状況にあることに加え、団体旅行から個人旅行への嗜好の変化、地域の観光客数の動向等、観光を取り巻く様態が変化してきたことによるものと考察する。今後インバウンドやインターネットの利活用による誘客のほか、本施設を含めた地域全体の魅力向上のための連携も必要であると同時に、本事業の目的に縛られず、例えば、合宿誘致や各種会合等への空室貸し出し等、施設の多目的な解放も検討する必要がある。一方で令和2年3月ごろからのコロナ禍の影響は顕著であることから、今後はウイズコロナ・アフターコロナを見据えた施設利用の検討が急務となる。
全体総括
他会計への依存体質が恒常化しており、この脱却が急務であるほか、地域住民や観光客のニーズの分析によりできる限り正確な需要予測に基づいて、過大な投資を避けながらも施設の充実を図る必要がある。さらに、民間事業者への影響を踏まえながらも協調を図り、本施設が観光目的だけでなくコンベンション機能など地域住民にとって多目的で利活用されていることを鑑み、本事業に対して広く理解を求める努力を継続しなければならない。本事業においては指定管理者制度を継続導入するが、指定管理者の裁量の自由度を増しながらも事業継続を図るため、令和元年度までの代行制から利用料金制への転換、施設改修等の負担区分の明確化を進める。また、コロナ禍が観光面に及ぼす影響を注視しながら、国県等との施策を活用した効率的かつ安定的な事業展開を図る必要がある。