経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は、若干の増加傾向を示していますが、いまだ新規整備の途上にある本市においては、収益の中核を占める料金収入が少なく、100%には程遠い数値となっています。今後も、後年度の地方債償還金の極端な増加をもたらさないように計画的な事業執行を行いながら、一方では接続率の向上に取り組んでいく必要があります。企業債残高対事業規模比率は、平成18年度に策定した「公債費負担適正化計画」以降、徐々に低下してきていますが、類似団体平均値に比べると約2倍程度の高い数値となっています。これは、今まさに行われている整備工事に必要となる財源として、地方債に頼らざるを得ないということが主な原因となっているものです。経費回収率は、類似団体平均値に比べ低い水準となっていますが、これは整備途上にある本市では下水道への接続人口がまだまだ多くなく、そのため、使用料収入が少ないことが原因と考えられます。汚水処理原価は、類似団体平均に比べると同等か、若干下回る数値となっていますが、今後、施設の老朽化が進み、処理原価が増加していくことが予想されるため、維持管理費の抑制や有収水量増加の取り組みを進めることが必要となってきます。水洗化率は、平成23年度以降ほぼ横ばいで推移していますが、毎年度、供用開始地区が増えているという状況を考えれば、それほど悪い数値ではないと思われます。しかし、他の経営指標向上に密接に関わっている比率であるため、今後も接続人口が増加していくよう取り組んでいく必要があります。
老朽化の状況について
幸手市は、埼玉県が整備する中川流域下水道の中で最も上流に位置していることから、流域幹線が到達するのが遅く、それに伴う市の公共下水道も平成3年度にようやく供用が開始されるなど、流域における他の市町に比べると、整備開始が最後発となっています。このため、整備されている下水道管は耐用年数に比べて全般的に新しいものが多く、早くから整備を進めることができた他市町よりも、老朽化対策の必要性はあまり高くありませんでした。しかし、供用開始以前から市内に整備されていた集中浄化槽方式を用いた汚水処理区域のうち、後に公共下水道へ接続替えを行った地域などを中心として、老朽化が進んでいる下水道管も現れてきていることから、今後は、新規整備の途上ではあるものの、同時に老朽管対策にも取り組んでいく必要があります。
全体総括
本市の公共下水道は、平成27年度末における普及率が44.25%となっていて、これからも新規整備が続いていきます。また、今後は施設の老朽化も徐々に進行していくことから、更新・修繕といった対応も同時に必要となってきます。このため、整備財源の確保には今まで以上に努めていかなければならず、補助金の有効活用はもとより、接続人口増加への取り組みや、極度な依存にならない範囲での地方債の活用、また、歳出面では、経費削減に努めた無駄のない予算執行など、バランスを持った事業運営が求められてきます。このような状況に対応するためには、より適切な整備計画を策定していくことが肝要ですが、それを可能にするため、自らの経営状態や資産状況などをより正確に把握し、且つ分析していくことが大切になってきます。