経営の健全性・効率性について
①収益的収支比率が100%に達しておらず、健全な経営状況であるとはいえない状況にある。また、本来使用料で回収すべき経費を使用料収入で賄えていないため、経費回収率が100%未満となっている。④収入に対する企業債残高の割合を示す企業債残高対事業規模比率は、平成25年に整備がすべて完了していることから、短期的には類似団体より高い数値で推移するものの、平成33年度以降は、毎年残高が減少していく見込みとなっている。⑤経費回収率の改善を図るためには、可能な限り汚水処理費の削減を図ったうえで、適正な使用料収入を確保することが必要である。なお、本事業は、農村地域における資源循環の促進や農業用用排水の水質保全等を目的として、処理人口が概ね1,000人程度を単位として整備されており、スケールメリットが働きづらいことが課題となっている。また、市内に21の処理施設が点在して整備されており、これまでの整備費に対する地方債償還金が事業費の多くを占めていることが、数値悪化の原因となっている。
老朽化の状況について
本事業は、最も古い施設で昭和58年から稼動しており、30年以上が経過していることから、今後耐用年数の経過による大幅な管渠・施設の更新が予測される。さらには、平成23年3月に発生した東日本大震災の影響により、多くの処理区で不明水量が増加しており、老朽化に加えて不明水の対策が必要である。処理場施設については、機能を維持していくため老朽化対策事業(機能強化事業)を計画的に実施し、平準化を図りながら更新を行っていく。また、施設利用率が類似団体を下回っており、処理場の処理能力が実際の流入量に比して過大となっていることから、施設更新の際にはダウンサイジングや統廃合について検討を行うなど、維持管理経費削減に向けた取り組みが必要である。
全体総括
収益的収支比率及び経費回収率が100%に達していないことから、早急に投資の効率化や整備計画の見直し、維持管理経費の削減など、経営改善に向けた取り組みが必要である。その上で、なお必要な経費については、使用料水準の適正化により、経営の安定化を図る必要がある。本市では、平成28年度中に策定される「経営戦略」に基づき、中長期的な視点に立って計画的に上記の取り組みを進めながら、持続可能な経営に向けて、諸課題の改善を図っていく。なお、企業債残高については、計画されている処理施設の整備が完了したことにより、徐々に減少に転じていくことが予想されるが、今後予想される老朽化した管渠や施設の更新、不明水対策を見据え、収益とのバランスに配慮しつつ、計画的に事業を進めていく。