経営の健全性・効率性について
本市の工業用水道事業は、S27.8に給水を開始して以来、産業経済の発展に伴い増加する水需要を賄うため4次にわたる拡張事業を行い、現在は1日当たり最大130,000㎥の給水体制を整えており、市の西部地域に広がる臨海工業地帯の工場5社と1日当たり最大94,610㎥の給水量で契約しています。これまで、アウトソーシングなどの経営改革に取り組むとともに、道路工事に合わせて管路の耐震化工事を行うことで事業費の縮減を図るなど経営基盤の強化に努めてきたことにより、消費増税などによる料金転嫁を除き実質35年間料金水準を据え置く中で、H8年度から23年連続で黒字を維持しています。そのため、財務関係の健全性・効率性を示す①から⑥の指標は、管路の耐震化工事に企業債を充当したことで「④企業債残高対給水収益比率」が上昇してはいるものの、全ての指標で類似団体平均値や全国平均に比べると良好な水準を維持しています。一方、業務関係の効率性を示す「⑦施設利用率」は、H6年の大渇水以降、毎年のように石手川ダムからの取水制限を受けていることなどから、渇水時だけでなく年間を通じて工業用水ユーザーから節水にご協力いただいているため、H30年度の1日当たり平均配水量は46,328㎥となっており、類似団体平均値や全国平均と比べて低い水準となっています。
老朽化の状況について
S27.8の給水開始時期やS30~40年代の拡張期に整備した施設が多く、それらの多くが近年更新時期を迎えていることから「①有形固定資産減価償却率」は類似団体平均値や全国平均より若干高く、老朽化が進んでいる状況です。そのような中、H20年度からは道路整備工事に合わせて管路の耐震化工事を行うなど、効率的な事業実施に努めることで「②管路の経年化率」は低下傾向にあり、現在は全国平均よりは高いが類似団体平均値並みの水準となっています。また「③管路更新率」については、道路工事の進捗に左右される部分もあることから年度によって波はありますが、H30年度は全国平均を上回り、類似団体平均値並みとなっています。
全体総括
老朽化施設の計画的な更新や耐震基準を満たしていない施設の耐震化が急務ですが、それらに加えて近年頻発している豪雨災害への備えとして停電対策や浸水対策を講じるなど、今後も安定的に水を供給すための施設改良が必要です。しかし、これら事業の推進により企業債発行額や減価償却費などの費用が増加することで、経営状況は次第に厳しくなることが懸念されています。そうした状況下でも、安定した事業運営を継続するため、事業費の平準化や効率的な施設の再構築など、中・長期的な視点に立って計画的に更新を進めるとともに、業務の効率化によるコスト削減などさらなる経営努力を行い、今後も健全経営を維持できるよう取り組んでいきます。