経営の健全性・効率性について
手取川扇状地の豊富な地下水を資源として旧町時代からの企業誘致により石川県下最大の工業用水道事業として合計で4セグメントの事業が存在している。このため、積極的な設備投資と企業の生産活動支援が行われてきた結果、企業債残高対給水収益比率は類似団体平均を大きく上回っている。経常収支比率は類似団体平均をやや下回ってはいるものの100%以上であり、累積欠損金もないことから健全な経営が図られているが、平成27年に生じた地下水低下により安定供給のための設備投資が行われ、費用の一部を一般会計からの繰入金で賄っている状況である。供給先企業は、化学、電子、繊維、金属分野における業界大手のトップメーカーであるが、その分、グローバル経済の影響を受けやすく初期の施設整備に対する利用率や契約率が伸び悩んでいる。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は類似団体平均より低いものの緩やかに老朽度合いは進行しており、今後はアセットマネジメント計画を事業セグメントごとに段階的に策定し、更新投資を計画的に行っていかなければならない。管路については、総管路延長の約50%を占める根上地区が布設から約15年の経過と比較的新しいが、辰口寺井地区では布設後35年を経過した管路が多く存在しており経年化率は今後、急激に上昇していくことが見込まれる。このため、施設の長寿命化を図りながら計画的な更新が必要である。
全体総括
収益性の観点からは純利益を計上しており経営は概ね健全である。成長性においては企業誘致を推進し事業規模を拡張してきたが、企業債に依存したことで企業債残高対給水収益比率が類似団体等を大きく上回り、安全性(資金繰り)が懸念される。このため中長期的な視点に立った責任水量の確保が課題である。地球規模での気候変動(温暖化)や世界経済の短期周期での大幅変動、日本国内における人口減少等々、成長が見込めない時代の中で、施設・管路の老朽化にも対応していかなければならない。このことから、事業セグメントごとにアセットマネジメント計画を策定し、施設の長寿命化と更新を供給先企業の一層の理解を得ながら計画的に進め、独立採算による経営の健全化を目指していきたい。