経営の健全性・効率性について
経営の健全性・効率性を表す経常収支比率と経費回収率は引き続き改善しているが、これは下水道使用料の調定期日変更により、2年度が13か月分の調定となった影響である。また、汚水処理原価は類似団体平均より高い状態である。企業債残高対事業規模比率も類似団体に比較して高い水準にある。これは企業債を活用して未普及対策事業を進めているが、収益(下水道使用料)の発生が後年度になるためと考えてる。また、今後も未普及対策事業や浸水対策事業などの財源として多額の企業債を起こす計画があるため、企業債残高は増加する見込みであり、財政運営上注意が必要である。類似団体に比較して汚水処理原価が高いため、汚水処理コストの削減努力は続けなければならないが、その大半を減価償却費が占めることから、大幅な削減は困難と考えている。以上のことから、将来にわたり、経営の健全性・効率性を維持するためには、費用に見合う適正な収益を確保する必要がある。このことは、令和元年度に策定した「経営戦略」の投資・財政計画でも明白になっており、平成15年度以来、改定をしていない下水道使用料単価の見直しについて、下水道事業審議会に諮問し、単価引き上げの答申を得たところである。下水道普及率、水洗化率の向上とともに、適正な下水道使用料を確保することで経常収支比率、経費回収率、流動比率等を改善し、長期にわたる経営の安定性を確保することができる。
老朽化の状況について
昭和40年代に供用を開始した管渠が間もなく法定耐用年数を迎えるため、老朽化対策に着手する必要があるが管渠の老朽化具合に合わせて、最適な対策工事実施時期と投資額を設定しなければならないと考えてる。すでに、一部では老朽管渠の更新工事を開始した。長寿命化事業では、令和元年度に策定した下水道ストックマネジメント計画で定めた令和7年度末の下水道管長寿命化対策率15%を目標に対策を進める。なお、「経営戦略」では老朽化対策事業費として、令和51年度までに413億円を見積もっている。また、法定耐用年数を超えていたポンプ場設備の更新工事は令和元年度に終了した。
全体総括
当市の下水道処理人口普及率は令和2年度末で75.87%に留まっており、一層の未普及対策の推進が必要なことに加え、老朽化対策、地震地策なども進めなければならないことから多額の投資を予定している。一方で、その多額の投資にも関わらず、「経営戦略」で推計したとおり、長期的な人口減少等による下水道使用料収入の減少に伴い、厳しい経営環境が続くことが見込まれる。したがって、将来にわたり継続的・安定的な事業運営を行うため、一層の支出の見直しだけではなく、適正な下水道使用料収入の確保を図る必要があり、令和2年度に下水道事業審議会に下水道使用料単価見直しの諮問を行い、単価引き上げの答申を受けたところである。今後はその答申を受け、下水道利用者の理解を得て、単価改定を実行していく。