経営の健全性・効率性について
〇経営の健全性①経常収支比率は、引き続き100%以上を維持しており、②累積欠損金がないことや、借入(企業債発行)もないため、比較的健全な経営を堅持している。なお、令和2年度が前年度(令和元年度)と比較して経常収支比率が減少している理由としては、経常収益の伸び以上に経常費用が増加しているためであり、その主なるものは、地方公務員法及び地方自治法の改正に伴い、会計年度任用職員制度が導入されたことにより賞与引当額を追加したこと、及び、令和元年度に実施した大規模な改修(保存)工事により減価償却費が増加したことなどによる。〇経営の効率性令和2年度は、経常費用の増加により⑧給水原価が全国平均を上回ったほか、⑤料金回収率が100%を下回る結果となり、給水量減少の傾向が続く中で、経営を取り巻く環境は一層厳しさを増している。ただし、供給単価については、約26.0円となっており、現在の基本料金単価(@26円)とほぼ同額であることから、基幹事業である給水事業においては効率的経営を堅持している。⑦施設利用率及び⑧契約率の一層の増加を図るためには、基幹事業である給水量の増加を目指す必要があり、現在、佐賀県及び給水エリアの自治体で新たな工業団地整備計画が具体化し、又は、進捗している中で関係機関と一体となって企業誘致活動及び新規の給水事業所の獲得に向けて取り組んでいく必要がある。
老朽化の状況について
①有形固定資産減価償却率が全国平均値を大きく上回っており、施設・設備の老朽化が顕著になっている。構造物や管路の更新期が到来している中ではあるが、適切な改修・保全工事を計画的に進めることで、施設・設備の長寿命化を図ることとしており、特に構造物については、平成18年度に実施した老朽診断に基づく改修工事を令和7年度までに完了させる予定であるほか、電気・計装設備やポンプ等の機械設備についても、適切なオーバーホールや予防保全の考え方に基づく修繕・更新を行い、事業の業務継続を図ることとしている。なお、管路については、更新期到来までに老朽度や耐震調査を行い、その結果を踏まえ整備計画を具体化する予定である。
全体総括
近年の事業収益の減少から経営を取り巻く環境は依然として厳しく、単年度の収支に加え、将来の更新投資に必要な事業報酬の確保も困難になっている。一方、当面の施設・設備の改修・改良・保全対策に必要な損益勘定留保資金及び建設改良積立金のほか、年度欠損を穴埋めする利益積立金などの内部留保資金は一定程度を確保しており、また、累積欠損を生じていないこと、企業債発行がなく償還が必要でないことなど財務体質は比較的健全であることから、今後とも安定給水を維持しつつ、経営体質の強化に取り組んでいく必要がある。このため、令和2年度に策定した「経営戦略」の投資・財政計画に沿いつつ、各年度の検証を行いながら適切なローリングを実施し、健全経営を堅持することで、「低廉な工業用水道料金の維持」「良質の工業用水の安定供給」という当企業の経営の基本方針を達成していく。