経営の健全性・効率性について
本市の下水道は,市内に最終処理場がなく東京都が管理する流域下水道に接続していること,地形の高低差が少なく中継ポンプ場は1箇所のみであること,下水道管布設延長に占める合流管の割合が約93%であること等の特徴があります。①経常収支比率は,100%を僅かに下回りましたが,収支はほぼ均衡しています。②累積欠損金比率は,昨年度に続き当年度純損益が純損失となったことから,上昇しています。なお,令和2年度策定した「調布市下水道ビジョン」の推計では,今後数年間は累積欠損比率の上昇が続く見込みです。③流動比率は100%を超えており,決算後1年以内に支払を要する負債に対する資金があることを示しています。ただし,資金残高に十分な余裕がある状況にはありません。④企業債残高対事業規模比率は,企業債の繰上償還等に伴い改善しました。⑤経費回収率は,減価償却費等の減少に伴う汚水処理費の減少により改善しましたが,⑥汚水処理原価が類似団体平均よりも低い状況にあるにも関わらず100%を下回っており,下水道使用料収入も含めた収支のあり方の検討が必要な状況にあります。⑧水洗化率は99.98%で概ね100%を達成できています。以上のことから,経営の健全性・効率性の観点では,十分な資金残高の確保や経費回収率の向上が課題となっています。
老朽化の状況について
本市は昭和42(1967)年度から下水道整備を開始し,昭和62(1987)年度に下水道人口普及率100%を達成しました。①有形固定資産減価償却率は,類似団体平均よりも低い水準となっていますが,今後も減価償却の償却期間が完了した資産が増え続けていく見通しであることから,対策事業の拡大を検討していく必要があります。管渠総延長に占める標準耐用年数超過管渠の割合を表す②管渠老朽化率は,全国平均6.54と同一水準となっています。昭和40年代から50年代にかけて集中的に下水道整備を行っていたことから,今後,急速に上昇していく見通しです。③管渠改善率は,昨年度に引き続き類似団体平均を下回っており,今後は,更なる管路の予防保全を推進していく必要があります。
全体総括
(1.②)累積欠損金比率,(1.③)流動比率,(2.③)管渠改善率から,下水道施設の老朽化対策事業を今後更に拡大していく必要がある中,資金残高を十分に蓄えることができていない状況にあります。また,(1.⑤)経費回収率が100%を下回っていることから,下水道使用料で賄うべき対象経費に対し,下水道使用料収入が不足している状況にあります。今後は,中長期の収支見通しの再検証により,適切な使用料水準のあり方の検討を進めるとともに,事後保全型から予防保全型への転換を一層推進していく必要があります。