経営の健全性・効率性について
経営の健全性・効率性を表す経常収支比率は前年度から悪化し100%を割り込んだ。これは、流域下水道維持管理費負担金や減価償却費等の増加によるもので、今後も同様な傾向が続くと予想している。同様の理由により経費回収率も悪化し、汚水処理原価は高止まりの状態である。企業債残高対事業規模比率も上昇した。今後も未普及対策事業や浸水対策事業などの財源として多額の企業債を起こす計画があるため、企業債残高は増加する見込みであり、財政運営上注意が必要である。類似団体に比較して汚水処理原価が高いため、汚水処理コストの削減努力は続けなければならないが、その大半を減価償却費が占めることから、大幅な削減は困難と考えている。以上のことから、将来にわたり、経営の健全性・効率性を維持するためには、費用に見合う適正な収益を確保する必要がある。このことは、令和元年度に策定した「経営戦略」の投資・財政計画でも明白になっていたことから、平成15年度以来、見直しをしていない下水道使用料について令和5年4月に改定を予定しており、各指標の改善が見込まれる。
老朽化の状況について
昭和40年代に供用を開始した管渠が間もなく法定耐用年数を迎えるため、老朽化対策に着手する必要があり、一部では老朽管渠の更新工事に着手した。長寿命化事業では、令和元年度に策定した下水道ストックマネジメント計画で定めた令和7年度末の下水道管長寿命化対策率15%を目標に対策を進める。なお、「経営戦略」では老朽化対策事業費として、令和51年度までに413億円を見積もっている。また、これまで一般会計で管理していた雨水ポンプ場9施設を、令和3年度末に下水道事業に移管したため、これら施設の維持管理も適切に行っていく必要がある。
全体総括
当市の下水道処理人口普及率は3年度末で76.78%に留まっているため、一層の未普及対策の推進が必要なことに加え、老朽化対策、地震対策なども進めなければならないことから、今後、多額の投資を予定している。これに伴い、今後も減価償却費等固定費が増加することから、収支を均衡させるための財源確保が課題となっている。「経営戦略」の推計では、長期的な人口減少等により、整備面積の拡大にもかかわらず、下水道使用料収入の伸び悩みが見込まれている。したがって、将来にわたり継続的・安定的な事業運営を行うためには、経営効率化や有収率の改善などによる経費削減を進めるとともに、接続率の向上、適正な下水道使用料水準の確保などの収益改善に向けた取り組みを継続的に行う必要がある。