経営の健全性・効率性について
当市の下水道事業は、平成30年度から地方公営企業法の財務規定等を適用し、公営企業会計に移行したことから経年比較はできない。30年度決算の経常収支比率は100%以上であったが、経費回収率は100%未満であるうえ、汚水処理原価も類似団体平均よりも高い金額である。企業債残高対事業規模比率も類似団体に比較して、高い数値を示しているが、今後、未普及対策事業や浸水対策事業などの財源として、多額の企業債を起こす計画があるため、企業債残高は増加する見込みである。また、汚水処理コストの削減努力は続けなければならないが、汚水処理原価の急激な削減は困難と考えられることから、将来にわたり、経営の健全性・効率性を維持するためには、費用に見合う適正な収益を確保する必要があり、特に平成15年度以来、改定をしていない下水道使用料見直しの検討は避けることができない。下水道普及率、水洗化率の改善とともに、見直しによる適正な下水道使用料を確保することで、経常収支比率、経費回収率の改善だけではなく、流動資産の増加により、流動比率が改善し、また、公営企業会計移行による特別損失計上のため発生した累積欠損金の早期の解消が可能になる。
老朽化の状況について
昭和40年代に供用を開始した管渠が、間もなく法定耐用年数を迎えるため、老朽化対策に着手しなければならないが、それぞれの管渠の老朽化具合に合わせて、最適な対策工事実施時期と投資額を設定する必要がある。そのため、令和元年度に下水道ストックマネジメント計画を策定したうえで対策工事に着手し、令和7年度末に下水道管長寿命化対策率15%を目標に対策を進める。なお、法定耐用年数を超えていたポンプ場設備の更新は、令和元年度に終了した。
全体総括
当市の下水道処理人口普及率は平成30年度末で74.07%に留まっていることから、一層の未普及対策の推進が必要なことに加え、老朽化対策、地震地策などを進めなければならない。一方で、予想される長期的な人口減少による下水道使用料収入の減少に伴い、今後も厳しい経営環境が続くことが見込まれる。したがって、将来にわたり継続的・安定的な事業運営を行うため、投資額等の支出の見直しだけではなく、適正な下水道使用料収入の確保を図る必要がある。なお、経営戦略は、令和元年度中の策定予定である。