経営の健全性・効率性について
本市の公共下水道事業は、平成に入ってから本格的に整備を進めたことで、企業債残高が大きくなり、元利償還金を使用料収入で賄うことができないため、一般会計から多額の基準外繰入金を受けて事業運営を行ってきました。近年、企業債残高が順次償還終了を迎えていることから、「企業債残高対事業規模比率」は減少傾向にあります。一方、減価償却費については、年々増加しており、使用料単価の減少も影響し、「経費回収率」は100%をわずかに下回っていますが、資金としては確保しています。「施設利用率」については、単独で処理施設を保有していないため、グラフには表れません。「水洗化率」は、一般住居地域を整備してきたことから、水洗便所設置済人口は緩やかに増加しており、97%前後で推移しています。これらのことから、「流動比率」で表れる短期的な資金面は不安定な状況ではありますが、基準外繰入金の抑制など経営面の課題を順次改善していることから、段階的に安定経営に向けて進んでいるものと判断しています。
老朽化の状況について
本市では、昭和30年代から民間などの大規模開発に伴い、下水道整備を進めてきました。平成30年度には汚水整備の事業概成を迎え、本格的な維持管理に向けて、下水道台帳のシステム化をはじめ、下水道ストックマネジメント計画を策定しました。しかし、その際管路延長の精査によって、管路延長の修正が生じたため、「管渠老朽化率」と「管渠改善率」が低下しました。「管渠老朽化率」は類似団体平均値を下回っているものの、管渠改善率も下回っていることから、老朽化が進んでいる状況です。そのため、管渠やポンプ場などの下水道施設にかかる維持管理コストが増加しており、今後の施設維持に向けて、令和元年度からストックマネジメント計画に基づく、点検調査等を実施しています。
全体総括
昭和30年代の大規模開発に伴い、下水道整備をスタートし、昭和から平成にかけて本格的に整備を実施したことにより企業債が増加し、現在でも経営面の大きな負担となっている状況です。住居系地域については、平成30年度に事業概成を迎えましたが、今後は、老朽化が進む管渠等の本格的な維持管理が必要となるため、「下水道長寿命化計画」や「ストックマネジメントの考え方」に基づく更新・改築事業に取り組んでいます。また、平成30年度に策定した「経営戦略」や令和2年度に策定した「下水道整備基本計画」に基づき、経営面では基準外繰入金の削減を行い、事業面では計画性を重視しながら、今後増加する流域下水道事業に係る負担金の経営面、特に資金面に与える影響を注視しつつ、経営基盤の強化を図っていきます。