経営の健全性・効率性について
収益的収支比率は、料金収入や他会計繰入金以外の収入(資本費平準化債未利用利子)に依存しているため、100%を割り込んでいますが、下水道接続により料金収入が増加、公営企業化に向けた資金準備としての繰入金の増加により、前年度に比べ比率は好転しています。下水道整備は先行型投資で財源に企業債を活用しています。整備当初は経営の効率性よりも公共性を優先したため、投資額(資本費)を後年度に回収できない料金収入となっていることが実態です。このことから、近年は資本費に対する取組として、市債償還額を上回る新たな市債を発行しない方針を実施、公債費の償還期間と減価償却期間の差を埋めるため資本費平準化債を最大限活用し償還期間を先延ばして償還額の平準化を図ることで、企業債残高対事業規模比率、経費回収率および汚水処理原価が好転しています。また、資本費に対する繰入基準を実態に即した算出方法に改めたため、密接に関連する企業債残高対事業規模比率、経費回収率および汚水処理原価は、大きく好転しています。単独処理となる沖島地区を除く流域関連下水道は、供用開始から16年経過程度のため、公共下水道事業に比べ、水洗化率は低く、類似団体よりも低い状況で、人口減少の兆しがあり下落となっています。
老朽化の状況について
管渠の耐用年数からして現在は緊急的な管渠の更新は必要ないとの判断から、管渠改善率は0%にとどまっています。今後は、過去に多量に整備した管渠の更新時期が今後一度に集中して到来すると予想され、また、更新投資は新たな供用開始による料金収入が伴わないため、現在とこれからの経営状況を見据え、計画的な対応が必要となります。また、琵琶湖唯一の有人島である沖島地区は昭和57年に供用開始し、単独にて汚水処理しているため、処理施設の老朽化が進んでいます。
全体総括
類似団体と比較しても、良好な経営とはいえない状況で、将来の事業継続に向け早急な対応が必要です。平成29年度から企業会計に移行することで経営状況が「見える化」されるので、これらの有用な情報を活用しながら、投資と財政の両面から捉えた中長期的な「経営戦略」を平成29年度に策定します。今後の更新も含めた整備は、地域の実情に応じて料金で回収できる投資規模・スペックを見極め、さらに投資の平準化に向けて取り組む必要があります。その他維持管理経費の削減に取り組んでもなお料金で経費を回収できないという見通しになった場合、水洗化率向上による料金収入の増加が限界になりつつある中、適切な料金を確保するために料金体系の見直しを実施しなければなりません。