経営の健全性・効率性について
経常収支比率は、毎年度100%を上回っているが、これは使用料収入等で賄いきれない費用の財源を、繰入金として一般会計から繰り入れているためである。今年度、経常収益のうち使用料収入の割合は約35%、一般会計からの繰入金の割合は約37%で前年度と同率であり、依然として繰入金への依存度が高くなっている。また、経費回収率は、87.69%であり、汚水処理費のおよそ1割を使用料収入以外の収入で賄っていることを示している。短期的債務の支払能力を表す流動比率は、32.96%で前年度より減少しているが、これは未払金が減少したことが大きな要因である。企業債残高対事業規模比率については、前年度より減少しており、料金収入に対する企業債残高の割合が減少していることが分かる。施設利用率は、流域下水道で処理した水量も計上されているため類似団体平均値を上回っているが、単独公共下水道事業における施設利用率は、40.19%と低い値になっている。水洗化率は86.59%(※1)で類似団体平均値を上回るも、全国平均は下回っている。今後も料金収入増加のため、水洗化率向上のための取り組みを続ける必要がある。また、汚水管に流入する雨水や地下水等の不明水対策に取り組むことで有収率を改善する必要がある。※1水洗化率86.46%と表記されているが、水洗便所設置済人口の修正を行ったため、正しくは86.59%である。
老朽化の状況について
資産の老朽化度合いを表す有形固定資産減価償却率は、類似団体の平均を上回っており、施設の老朽化が順次進んでいる状況だと言える。供用開始年度が比較的遅いにもかかわらず、耐用年数を超えた管渠の割合を表す管渠老朽化率は、類似団体平均値を上回っている。これは、昭和40年代以前に整備した雨水渠が約10.6㎞存在し、これらが耐用年数を上回っているためである。これらの管渠については、老朽管調査を行い、修繕することで機能の保持を図る。管渠改善率は、0.00%であるが、今後も、老朽化対策に要する事業費が飛躍的に上昇することが予想される。限られた財源の中で計画的な更新を行うために平成28年度に策定した経営戦略に基づいた更新を行う必要がある。
全体総括
現状は、一般会計からの繰入金により、経営を維持している状態である。今後は、管渠や施設の老朽化が進むことで、更新費用の増加が見込まれる。また企業債償還金についてもしばらくは高水準で推移する見込みで、資金繰りの厳しい状況が続くことが予想される。維持管理費削減のために、管渠や施設のスペックの見直し等を検討するとともに、汚水管に流入する雨水や地下水等の不明水対策に取り組むことで有収率の向上を図っていく。また、財源確保のために、料金収入の増加に繋がる水洗化率向上の取り組みを継続するとともに、他会計からの借入金による新たな財源確保を行う。限られた財源の中で効果的な事業運営を行うために、ストックマネジメント基本方針や各施設別計画、経営戦略に基づいた計画的な運営が必要である。