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本市の令和3年度における財政力指数は、0.67(対類似団体比+0.11)となり、類似団体と比較すると、比較的上位に位置している。しかし、人口減少の進展や、市内大手製造業の事業縮小などに加え、新型コロナウイルス感染症の影響により、市税収入の大幅な増加は見込めない。現状としては、財政力指数は横ばいの状況が続くものと思われる。今後は、事務事業の選択と集中により、需要額の抑制と併せて、子育て支援事業や企業誘致により若年層の人口の流出を防ぎ、税収増に努めていくほか、公共施設等の施設命名権収入(ネーミングライツ)や市有財産の売払いの推進により財源の確保を目指す。
本市の令和3年度における経常収支比率85.0%(対類似団体比-2.0pt)は、令和2年度の89.4%から4.4ポイント改善し、3年連続で類似団体平均を下回った。公債費の増加などにより分子となる経常経費充当一般財源等は増加したが、国の補正予算により追加交付があった普通交付税の増加により経常一般財源額(分母)が大幅に増加したことにより、結果として経常収支比率が改善した。ただし、今回の改善は国や県から交付される経常一般財源が一時的に増加した結果に過ぎず、市税収入等の市が自主的に収入する経常一般財源の減少傾向が変わった訳ではない。今後も、定住人口、市税収入の確保に努め、さらなる歳出削減により改善を図る。
本市の令和3年度における人口1人当たり人件費・物件費等決算額130,067円(対類似団体比-42,018円)は、令和2年度の121,360円から8,707円増加した。人件費・物件費が増加した主な要因としては、どちらも新型コロナウイルスワクチン接種会場運営に係る経費が増加したことが挙げられる。維持補修費についても、河川浚渫事業や市道の維持管理事業に係る工事費等により近年増加傾向にある。人口が減少し続ける中、感染症対応や老朽化した公共施設の維持補修等の増加が予想されるため、人口1人当たり人件費・物件費等の増加傾向は今後も続く可能性がある。
本市の令和3年度におけるラスパイレス指数99.6は、令和2年度と同値であり、類似団体平均を2.1ポイント上回った。本市のラスパイレス指数が類似団体平均を上回る状況が続いている要因としては、社会人経験者を採用していた期間や、新規採用を抑制した時期があり、経験年数階層内における職員の分布が若年層と比較すると中堅職員以上が大きく占め、そうした影響により平均給料月額が高くなったためと考えられる。
本市の令和3年度における人口1,000人当たり職員数7.20人(対類似団体比-1.65人)は、令和2年度の7.13人から、0.07人の増でほぼ横ばいとなった。類似団体の中で比べても、少ない職員により市政を運営しているといえる。令和3年12月に策定した矢板市定員適正化計画では、令和7年度までの5年間で職員数を22人(8.5%)削減することを掲げている。自然災害の増加や、権限移譲等により業務量は増大しているが、行政サービスを低下させることなく、各種研修等を継続的に実施し、少数精鋭による職員配置を行っていく。
本市の令和3年度における実質公債費比率8.8%(対類似団体比+0.5pt)は、令和2年度の9.1%から0.3ポイント減少した。この値は3か年の平均値であり、令和3年度単年度でみると、元利償還金が過去3か年で最大となったが、普通交付税が増加した影響などで7.8%となった。今後、矢板北スマートIC整備や塩谷広域行政組合のエコパークしおや建設、旧環境施設解体などの大型公共事業に係る地方債の元金償還が長期間に及ぶため、元利償還金や組合負担金が高水準で推移することが予想され、実質公債費比率が悪化する懸念がある。財政規模とのバランスがとれた中長期的な償還計画に基づいた市債の借入れを行う必要がある。
令和3年度における将来負担比率29.1%(対類似団体比+4.0pt)は、令和2年度の52.0%から22.9ポイント減少し、3年振りに減少に転じた。これは、大型公共事業が一段落した一般会計等に係る地方債の現在高が減少したことと、令和2年度決算剰余金を財政調整基金に積み立てたことで、充当可能基金が大幅に増加したことが主な要因と考えられる。一時的に将来負担は減少しているが、今後も老朽公共施設の更新、長寿命化などが見込まれるため、将来に過度な負担とならないよう中長期的な計画に基づき市債の借入れを行う必要がある。
本市の令和3年度における人件費に係る経常収支比率22.9%(対類似団体比-0.6pt)は、令和2年度の23.6%から0.7ポイント減少し、2年連続で類似団体平均よりも低い水準となった。人口当たりの職員数が少ない(上位である)ことに加え、令和3年度は新型コロナウイルスワクチン接種会場運営に係る経費や、国体開催準備にかかる経費など、人件費全体に占める臨時的経費の割合が上昇したことが、類似団体平均を下回った要因と考えられる。
本市の令和3年度の物件費に係る経常収支比率14.0%(対類似団体比-0.5pt)は、令和2年度の14.6%から0.6ポイント減少したが、類似団体平均を0.5ポイント上回った。これは前年度土曜新型コロナウイルス感染症対策の交付金を各種施策に充当したこと、再算定があった普通交付税の増加などにより経常一般財源額が増加したことなどにより、比率としては減少したと考えられる。今回の改善は臨時的な財源の増加による改善なので、今後の変動に注視していく必要がある。物件費を含む経常経費については、徹底した削減に取り組んでいるが、今後も事務事業の見直しや委託施設等の整理などにより一層の圧縮を図っていく。
本市の令和3年度における扶助費に係る経常収支比率8.3%(対類似団体比+0.6pt)は、令和2年度の8.7%から0.4ポイント減少したが、依然として類似団体平均よりも高い状況が続いている。令和2年度から令和3年度にかけて、経常的扶助費総額は微減で推移したが、再算定があった普通交付税の増加などにより経常一般財源が増加したため比率としては減少したと考えられる。本市では、障害福祉サービス給付費等が増加傾向にあり、今後もこの傾向が続くことが考えられる。資格審査等の適正化や各種手当への独自加算等の見直しを進めていくことで、財政を圧迫する上昇傾向に歯止めをかけるよう努める。
本市の令和3年度におけるその他の経費に係る経常収支比率11.9%(対類似団体比-0.5pt)は、令和2年度の12.3%から0.4ポイント減少し、類似団体平均を下回った。類似団体と共通した動きを見せていることから、再算定があった普通交付税の増加などにより経常一般財源額が増加したため、比率としては減少したと考えられる。国民健康保険特別会計繰出金などの増加傾向は変わっておらず、社会保障費の増加が続く限りそれらに係る繰出金も増加が続くと思われる。また、老朽化した公共施設の維持補修費の増加が見込まれることから、その他費用について引き続き注視が必要である。
本市の令和3年度における補助費等に係る経常収支比率13.8%は、令和2年度の15.8%から2.0ポイント減少し、類似団体平均を0.1ポイント上回った。令和2年度の比率上昇に影響した下水道事業会計への補助金額が減少したため、比率としては減少したと考えられる。今後は、各種団体への運営費補助金等について、社会情勢の変化等を踏まえ、個々の団体ごとに十分な精査と検証を行い、積極的に見直しを行っていく予定である。
本市における令和3年度の公債費に係る経常収支比率14.1%(対類似団体比-2.1pt)は、令和2年度の14.4%から0.3ポイント減少し、類似団体平均よりも少ない水準である。今後については、大型公共事業に係る起債の元金の償還が始まり、また、今後は老朽公共施設の維持補修等に係る起債事業が予定されるため、公債費に係る経常収支比率は上昇するものと思われる。
本市の令和3年度の公債費以外の経費に係る経常収支比率70.9%は、令和2年度の75.0%から4.1ポイント減少し、類似団体平均程度の水準となった。公債費以外の経常収支比率は、前年度同様新型コロナウイルス感染症対策の交付金を各種事業に充当したこと、再算定があった普通交付税の増加により経常一般財源額が増加したことにより改善した。ただし、今回の改善は国や県から交付される財源が一時的に増加した結果に過ぎず、市税収入等の市が自主的に収入する経常一般財源の減少傾向が変わった訳ではなく、今後も企業誘致や定住促進等による税収確保策に加え、経常的収入増に向けての取組みを推進していく必要がある。
(増減理由)令和01は、基金全体の残高合計が前年度比10.9%減の1,781百万円であり、うち財政調整基金は全体の44.6%に増加した。特定目的基金は、前年度比27.6%減の820百万円となり、うち、交通施設整備基金が23.2%減の292百万円、ふるさと納税基金が71.4%減の108百万円となった。また、令和01から譲与が開始された森林環境譲与税の一部を後年に活用することを目的に、未来の森づくり基金を新たに造成し、11百万円を積み立てた。令和02は、基金全体の残高合計が前年度比2.0%増の1,817百万円であり、うち財政調整基金は全体の39.8%に減少した。特定目的基金は、前年度比12.9%増の926百万円となり、うち、公共施設整備基金が67.8%増の297百万円、子ども未来基金が57.6%増の52百万円となった。令和03は、基金全体の残高合計が前年度比68.2%増の3,056百万円であり、うち財政調整基金は全体の51.8%に増加した。特定目的基金は、前年度比19.0%増の1,102百万円となり、うち、ふるさと納税基金が163.2%増の308百万円、子ども未来基金が53.8%増の80百万円となった。(今後の方針)財政調整基金については、標準財政規模の10%程度の残高を目標としてきたが、令和3年度に20%弱まで積み立てることができたため、この水準を維持していく。特定目的基金については、庁舎等整備基金は5億円を目標に積み立て、公共施設整備基金は新たに整備する文化スポーツ複合施設整備事業に充当しつつも老朽公共施設の維持や改修等に備えて可能な範囲で積み立て、ふるさと納税基金は充当が必要な事業を精査して取崩しを行い、その他の基金については、基金の趣旨に該当する事業に随時取り崩していく。
(増減理由)令和01は、積立額(143百万円)と取崩額(47百万円)の差分増(96百万円)により、年度末残高795百万円となった。令和02は、年度末時点で歳出超過となったことから、71百万円の取崩しを行い、年度末残高724百万円となった。令和03は、当初予算編成時に繰入金をゼロとし、最終的にも取崩額をゼロとした。加えて、前年度の決算剰余金の一部の積立て(860百万円)を行い、年度末残高1,584百万円となった。(今後の方針)財政調整基金は、当初予算編成及び年度間調整に必要不可欠な基金であるため、当面の間は標準財政規模の20%程度の残高を確保する。
(増減理由)令和01は、不用額の補正減を積極的に行い、当初繰入見込(60百万円)を最終的に取崩額ゼロとした。令和02は、不用額の補正減を積極的に行い、当初繰入見込(60百万円)を最終的に取崩額ゼロとした。令和03は、不用額の補正減を積極的に行い、当初繰入見込(60百万円)を最終的に取崩額ゼロとした。加えて、前年度の決算剰余金の一部(100百万円)と普通交付税の再算定で措置された臨時財政対策債償還基金費(103百万円)の積立てを行い、年度末残高370百万円となった。(今後の方針)やむを得ない事情による繰上償還等に対応するため、現状規模の金額を保持していく。令和3年度に積み立てた臨時財政対策債償還基金費については、令和3年度の臨時財政対策債に係る元金償還が開始する令和6年度以降、償還財源として取崩しを行う。
(基金の使途)・ふるさと納税基金:ふるさと納税制度を活用し、魅力あるまちづくりを推進するための基金。・公共施設整備基金:公共施設の整備に要する経費に充てるための基金。・庁舎等整備基金:庁舎等の整備に要する経費に充てるための基金。・交通施設整備基金:交通施設の整備に要する経費に充てるための基金。・子ども未来基金:子育て支援に要する経費に充てるための基金。(増減理由)・ふるさと納税基金:(積立)令和0166百万円令和02119百万円令和03308百万円(繰入)令和01~令和03各種事業へ充当(令和01336百万円令和02110百万円令和03117百万円)・公共施設整備基金:(積立)令和035百万円(繰入)令和03文化スポーツ複合施設整備事業7百万円・庁舎等整備基金:(積立)令和0150百万円令和0220百万円令和03利子のみ(繰入)無し・交通施設整備基金:(積立)利子のみ(繰入)平成29~令和02スマートIC整備事業(平成297百万円平成3041百万円令和0126百万円令和0234百万円)、平成30~令和03道路新設改良事業(平成3014百万円令和0150百万円令和0249百万円令和0350百万円)、令和01片岡地区市街地整備事業12百万円・子ども未来基金:(積立)令和0116百万円令和0249百万円令和0355百万円(繰入)令和01~令和03各種事業へ充当(令和0128百万円令和0230百万円令和0328百万円)(今後の方針)・ふるさと納税基金:充当事業を精査し、寄附者の充当希望先へ随時充当する。・公共施設整備基金:文化会館、市体育館等を複合化した文化スポーツ複合施設整備事業へ充当しつつも、老朽公共施設の維持や改修等に備えて可能な範囲で積立てを実施する。・庁舎等整備基金:庁舎整備に向け、当該年度末時点で可能な限り積立てを実施する。・交通施設整備基金:交通施設事業への随時充当する。積立予定なし。・子ども未来基金:年45百万円の積立てを継続的に実施。子育て支援に要する事業へ柔軟に対応する。
本市の有形固定資産減価償却率は、耐用年数を一部修正した令和元年度、矢板北スマートIC周辺道路などの新たな固定資産を取得した令和2年度を除き、対前年度比約2.0%の増で推移している状況であり、いずれの年度も類似団体平均値を上回っている。公共施設等の老朽化が年々進行し、利用者の安全確保の観点から、施設更新を速やかに進める必要があることを示唆している。本市においては、平成28年度に公共施設等総合管理計画、平成29年度に同再配置計画、令和2年度に同個別施設計画を策定しており、これらの計画を順次見直しながら施設更新等のマネジメントを進めることになる。
本市の令和3年度債務償還比率444.9%(類似団体比-68.7%)は、令和2年度の575.4%から130.5%減少した。地方債現在高など将来負担額が減少しており、追加交付のあった普通交付税や市税などの経常一般財源の増加に加え、財政調整基金等保有する現金の増加などにより債務償還に充当できる財源が大きく増加した結果、比率が大きく減少した。文化・スポーツ複合施設整備や公共施設の長寿命化・更新など、地方債現在高の増加の要因となる大型公共事業も控えており、今後も市の財政規模を考慮した債務管理を行っていく必要がある。
本市の令和3年度における将来負担比率29.1%(対類似団体比+4.0%)は、令和2年度から22.9%改善した。財政調整基金等の充当可能基金の増加や追加交付された普通交付税の増による標準財政規模の増加が主な要因である。文化・スポーツ複合施設整備や公共施設の長寿命化・更新などの大型公共事業等今後予定される事業実施に当たっては、事業の平準化を図るとともに将来負担の推移についても注視する必要がある。一方、令和3年度における有形固定資産減価償却率は、維持補修関連の工事が中心であったことから、令和2年度から1.7%悪化した。類似団体内平均値を上回っている状況が続いているため、今後より一層計画的に施設更新等のマネジメントを進めていく必要がある。
本市の令和3年度における将来負担比率29.1%(対類似団体比+4.0%)は、令和2年度から22.9%改善し、類似団体内平均値を3年連続上回った。また、実質公債費比率8.8%(対類似団体比+0.5%)は、令和2年度の9.1%から0.3%改善し、類似団体内平均値を2年連続で上回った。矢板市としては改善傾向ではあるが、文化・スポーツ複合施設整備や公共施設の長寿命化・更新などの大型公共事業により地方債現在高及び元利償還金が増加する可能性があることを考慮すると、将来負担及び実質公債費比率の推移については今後も注視し、事業の平準化など計画的に事業を実施する必要がある。
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