経営の健全性・効率性について
経常収支比率はわずかながらも増加を維持しており、類似都市平均よりも高い数値を示しているものの、純利益の額は企業債元金償還金を賄うには至らず、今後の施設の老朽化に伴う維持管理費の増加等を想定し、更なる効率化及び使用料の適正化に向けて検討する必要がある。流動比率については、比較的良好に推移している収支状況による流動資産の増加に加え、流動負債を主に占める企業債償還金については大幅な増額は見込まれないことから、数年はこの傾向が続くと考えられる。企業債残高対事業規模比率については、類似団体平均値と比較して低い値にあり、また管渠改善率においては平均値より高い値にあることから、一定の投資が行われているなかでは比較的良好な数値と考えられる。経費回収率については、ここ数年上昇傾向にあり、健全な経営状態を維持していると考えられる。汚水処理原価については、従前に行った公的資金補償金免除繰上償還による企業債支払利息の削減効果等もあり、効率化が認められる。水洗化率については、わずかな伸びに留まっており、類似都市平均と比較しても低い値であることから、水洗化を促進するための対策を強化する必要があると考えられる。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率については、みなし償却の廃止により減価償却累計額が増大し、類似団体平均値と比較しても高くなっていることから、保有資産が法定耐用年数に近づいていることが示されている。管渠老朽化率については、事業開始から50年を迎えたことにより、今年度より耐用年数を超えた管渠が発生している。今後も事業開始に合わせて大規模に整備された管渠が耐用年数を迎えることから、数値の悪化が見込まれる。管渠改善率については、類似団体平均値との比較においては良い数値であるものの、先の有形固定資産減価償却率及び管渠老朽化率を合わせて踏まえると、健全な更新ペースとは言えず、現在取り組んでいる長寿命化対策も合わせた計画的な施設更新が求められる。
全体総括
効果的かつ効率的な経営を目指し、地方公営企業法の全部適用や水道事業との統合などに取り組んだ結果、平成17年度から毎年純利益を計上しており、その傾向は概ね安定的に推移していると考えられる。また類似団体との比較においても良好な結果が示されていることから、公共下水道事業のなかにおいては比較的健全な経営が行われていると考えられる。しかし、事業開始から50年を迎え、今後予想される施設の老朽化に伴う改築更新等に備えた財源確保は切迫した課題となっており、また、一般会計からの繰入金や起債に頼らざるを得ない厳しい財政環境の現状を踏まえ、中・長期的な視点に立った事業の実施や使用料の適正化等による経営基盤の強化、有収水量確保のための水洗化率の向上等に努める必要がある。