経営の健全性・効率性について
本市の下水道事業の経営は、これまでの高利率の企業債を低利率に借り換えたことによる効果があるものの、事業開始当初の大規模投資の企業債償還金がピークを迎え、平成32年度まで高い水準で推移するため、厳しい経営となっている。当該年度の収入で費用をどの程度賄えているかを表す収益的収支比率について、平成27年度は前年度に比べ悪化しているが、これは企業債の借換額が償還金に含まれているためであり、その分を除くと前年度に比べ改善している。平成23・24年度の収益的収支比率が低く、平成25年度以降、大幅に改善したように見えるが、これはこの2年間に過去に借入れた高利率の企業債を繰上償還したことによる一時的な支出の増加が原因であり、実際は平成23・24年度に比べ、企業債償還金の増加により平成25年度以降は悪化している状況にある。使用料で回収すべき経費を、どの程度使用料で賄えているかを表す経費回収率は、総費用については流域下水道維持管理負担金等が増加しているものの、事務事業の効率的な実施や使用料を中心とした収入確保に努めてきた結果、類似団体平均値を上回り、改善傾向にある。汚水処理に係るコストを表す汚水処理原価については、類似団体平均値を上回ってはいるものの、平成26年度以降に大幅に悪化しているのは、これも企業債償還金や流域下水道維持管理負担金の増加によるが、大規模事業所の生産活動に左右された有収水量の大幅な減少も要因の一つとなっている。なお、施設利用率については、単独処理場を設置していないため、当該値を計上しておりません。
老朽化の状況について
本市の汚水管渠は、供用開始後30年程度で著しい劣化は見られないものの、地域条件によっては劣化が進行している管渠もあることから、それらの管渠については、順次、改築更新を行っている。
全体総括
事業開始当初の企業債償還金のピークが今後、5年間継続すること、また、使用料収入(有収水量)が大規模事業所に大きく依存しており、収支に与える影響が大きいことから、適正な使用料体系の確立や安定した使用料収入確保のために、個別訪問を強化し、水洗化率の向上に取り組む必要がある。また、企業債の償還金のピークが終了した後も、管渠の改築更新時期が迫ってくることから、適正な料金収入の確保に取り組むとともに、適正な維持管理により施設の延命化を図り、健全な経営を確保する。そのほか、経営状況を明確にするため、平成31年度から地方公営企業法の適用を受けるための手続きに、平成27年度から着手している。