経営の健全性・効率性について
経営状況は,経常収支比率が安定して100%を超え,累積欠損金も生じていないことから,健全な状態を維持している。一方で,水資源に恵まれず企業債を活用して多くの水源開発を行ってきたことにより,企業債残高は,給水収益の4倍を超え類似団体平均を大きく上回っており,支払利息の負担が大きいことなどにより給水原価は類似団体平均より高く,企業債残高の縮減を図るため,料金回収率も同じく高い傾向にある。なお,流動比率は,H26から新公営企業会計基準の適用により翌年度に償還すべき企業債等が流動負債に加わり100%を下回っているが,翌年度の償還は翌年度の給水収益等で賄うこととしているほか,企業債残高縮減を優先し内部留保資金を必要最小限にしていることによるものであり,支払い能力に問題はない。また,効率性について,施設利用率は,予備力も必要であるが,特に水資源に恵まれていないことから,度重なる水資源開発にあわせ,その都度,浄水場整備を行った結果,類似団体平均を下回っている。一方で,有収率は,配水調整システムによる効率的な水運用や全国トップレベルの漏水率の低さにより,類似団体平均を大きく上回り,効率的な状況にある。
老朽化の状況について
有形固定資産減価償却率は類似団体平均より低いものの,管路経年化率は,昭和40年代後半から昭和50年代にかけて急ピッチで整備した管が順次,法定耐用年数である「40年」を経過し,年々増加しており類似団体平均より高くなってきている。管の更新は一律に法定耐用年数によるのではなく,管体調査結果等により実質的な耐用年数を把握するなど長期的視点に立ってアセットマネジメントに取り組んでおり,管路更新率は,類似団体平均より低くなっているが,長寿命化を図りながら今後も増大する更新需要に的確に対応していくこととしている。
全体総括
安定経営の持続を図り,黒字経営により経営の健全性は維持しているが,多額の企業債残高を抱え中長期的に経営は厳しい状況にある。今後,給水収益が減少傾向にある中で,施設の大量更新期を迎え増大する更新需要に的確に対応していく必要がある。そのため,アセットマネジメントによる施設の長寿命化などに取り組みながら,実質的な耐用年数に基づく管路更新率の向上など,効果的・効率的な維持・更新を行うとともに,更なる企業債残高の縮減に取り組む必要があり,現在,福岡市水道事業の新たな基本計画となる新水道長期ビジョンの策定を進めている。